本研究は,横隔膜の廃用性萎縮からの回復メカニズムを実験的に明らかにし,効果的な回復法の確立を目指すものである.人工換気後も飼育が可能な改良型横隔膜萎縮モデルを完成させることで,横隔膜萎縮からの回復メカニズムに迫るとともに,効果的な回復法を検証することを目指した. 経口挿管を使用した改良型人工換気モデルの構築を目指したが,12時間の人工換気中にラットを適切な状態に保つことが困難であった.また,12時間の人工換気を行うことができた場合でも,その後の回復が順調でなく,分析に必要なサンプル数を確保することが困難であった.具体的には,従来行っていた頸部カテーテル挿入による血圧測定に比べ,尾部血圧測定は血圧変動への応答が小さく,非侵襲的ではあるものの本研究で必要とするバイタルとして用いるには検討を要することがわかった.また,気管切開にくらべ経口挿管では気管の分泌物が増加するため,これを除去するのに多少の熟練を要した. さらに,これまではボリュームコントロールで人工換気を行ってきたが,圧コントロール式に変更するべきであることが示され,人工換気システムそのものの改善点も明らかとなった.このほか,鎮痛剤の投与など回復期のケアについても課題が明らかとなり,今後の研究を行う上での改善するべき問題点を明らかにすることができた. なお,回復期モデルではないが,本研究を進める上で得られたアイデアから,12時間の人工換気中に毎時間1分の自発呼吸期を設けることで横隔膜萎縮及び機能不全を抑制することが可能であることを示すことができ,現在論文作成中である.
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