本研究では,体温調節機構において重要な部位である視床下部の視索前野/前視床下部(PO/AH)に注目し,自発運動によるPO/AHの脳内神経伝達物質(セロトニン:5-HT,ドーパミン:DA,ノルエピネフリン:NE)の変動及び体温調節に及ぼす影響を解明することを目的とした.3年目である2017年度(*研究休暇を挟んだため実質は4年目)は運動群と非運動群に対して1か月間の温熱暴露(32℃)を行い,ホモジネート法とマイクロダイアリシス法を組み合わせ,長期的な温熱刺激に対する運動の効果を体温調節反応と5-HT,DA,NE放出量から検討を行った.実験には雄Wistarラットを使用した.6週齢で購入し,その後運動群と非運動群に分けて1ヶ月間飼育した.飼育環境は12h:12hの明暗サイクル(7:00-19:00明期),実験中以外の時間は,水,餌の摂取を自由とした.なお本研究は,立教大学ライフサイエンスに係る研究・実験の倫理および安全委員会の審査・承認を得た上で行った.無線式小型体温計の手術,ホモジネート法,マイクロダイアリシス法は前年度までの方法と同様で行った.暑熱暴露に対する反応については,運動群の方が非運動群と比べてベースの体温が高く,過度の体温上昇が起きる可能性が考えられたが,暑熱暴露中の体温上昇の差異は特に無かったため,運動群において体温調節機能が向上した可能性が考えられた.また,今までのところそれに関わる神経伝達物質はDAが特に関与することが示唆されている.今後,更に詳細な分析を進め,自発運動による生体に及ぼす影響を詳細に検討していきたい.
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