研究課題
【目的】ロイシンはたんぱく質を構成するアミノ酸の1つであるが、mammalian target of rapamycin complex I (mTORC1) を活性化することによって、たんぱく質合成を増大させる。また、ロイシンは運動時に筋肉でATP合成のために燃料として良く酸化されることも知られている。このことは、運動中から運動後にかけて筋肉でロイシンの需要が高まることを示しているが、このときに、ロイシンを細胞内へ輸送するためのアミノ酸輸送体の発現が増大することが報告されている。本研究では、除神経によって筋肉を不動化するとロイシンの輸送に関わるLAT1、CD98、およびSNAT2、また、mTORC1の活性に関与すると考えられているPAT1のmRNAの発現が低下するか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】7週齢でSD系の雄ラット16匹を用いた。ラットを術前群3匹と、除神経群13匹に分けた。除神経群のラットの左坐骨神経に除神経術を施し、術後1、2、3および7日にそれぞれ3匹ずつ屠殺した。下肢筋群におけるLAT1、CD98、SNAT2、およびPAT1のmRNAの発現をqRT-PCR法を用いて定量した。また、ロイシンの輸送に関わるアミノ酸輸送体の発現はmTORC1によって調節されていることが示唆されているため、mTORC1の活性の指標としてelF4E binding protein 1(4E-BP1)のリン酸化の度合いをウエスタンブロット法で定量した。【結果と考察】除神経によって下肢筋群は萎縮したが、LAT1とCD98のmRNA の発現はそれに先だって有意に増大した。また、4E-BP1のリン酸化も除神経によって有意に高まった。以上の結果は、除神経によって下肢筋群が萎縮する過程において、たんぱく質の合成が高まるとともに、ロイシンの取り込みがL-タイプアミノ酸輸送体特異的に増大する可能性を示している。
3: やや遅れている
運動や不活動によって筋肉のアミノ酸感受性(アミノ酸によるmTORC1経路の活性化とたんぱく質合成の変動を指標)が変動するか否か、また、その機序にアミノ酸輸送体が関与するか否かについて検討している。初年度には、実験動物を用いた運動と不動のモデルの作成、mTORC1経路の活性の定量、およびアミノ酸輸送体の遺伝子レベルでの定量ができた。一方で、アミノ酸輸送体のたんぱく質を定量するための抗体を作製したが、その定量性の評価が未完了である。
引き続きアミノ酸輸送体の抗体の定量性評価をおこない、まずはアミノ酸輸送体のたんぱく質を定量できるようにした上で、当初の計画通り研究を実施してゆく。あわせて、筋肉の不動モデルとして除神経に加えてギプス固定モデルを追加する。
研究に必要な消耗品を購入したが、その合計額と予算額が完全には一致しなかったため8円の繰越金が生じた。今年度予算は予定どおり執行されたと考える。
当初の予定どおり研究を実施し、予算を執行する。
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Physiological Reports
巻: 2 ページ: e12254
10.14814/phy2.12216
巻: 2 ページ: e12185
10.14814/phy2.12185