研究課題
【目的】 昨年度の研究でラットの足関節を底屈させてギプス固定した場合、短縮位で固定されていた腓腹筋は萎縮し、伸長位で固定されていた前脛骨筋は萎縮しなかったが、両筋肉でmTORC1経路の活性化とロイシン輸送体の発現の増大が起こった。萎縮に関わらず筋肉が不動化されるとmTORC1経路の活性化とロイシン輸送体の発現の増大が起こることを示唆している。ラットの足関節を背屈させてギプス固定した場合も、両筋肉でmTORC1経路の活性化とロイシン輸送体の発現の増大が起こるか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】 10週齢のSD系の雄ラットを用いた。ラットの左足関節を最大に背屈させてギプスで固定し、1、3および7日後に屠殺し、腓腹筋と前脛骨筋を採取した。4E-BP1とS6K1のリン酸化と、LAT1とCD98のmRNAの発現量をqRT-PCR法で定量した。【結果・考察】 伸長位で固定された腓腹筋は固定7日後に萎縮したが、その程度は短縮位で固定されたときよりも小さかった。腓腹筋の4E-BP1とS6K1のリン酸化は、それぞれ固定3日後と1日後より増大した。LAT1 mRNAの発現は固定3日後に増大した。短縮位で固定された前脛骨筋は固定3日後に萎縮した。前脛骨筋の4E-BP1とS6K1のリン酸化は固定3および7日後に増大し、LAT1とCD98のmRNAの発現は固定3日後に増大した。固定様式に関わらず筋肉の不動化によってmTORC1の活性化とロイシン輸送体の発現の増大が起こると考えられる。不動化された筋肉でたんぱく質の分解が増大する際に、mTORC1経路が活性化されたり、ロイシン輸送体の発現が増大したりするのは、筋肉が急激に萎縮するのを緩やかにするための恒常性維持機構ではないかと考えられる。
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Scientific Reports
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