研究課題/領域番号 |
26350826
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
濱西 伸治 仙台高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (00374968)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 剣道難聴 / 衝撃力 / 骨導 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
実験Ⅰ「剣道経験者の聴力の経年変化」一時間半程度の剣道の練習前後で3種類の生体計測(オージオグラム・耳音響放射(DPOAE)・聴性脳幹反応(ABR))を本校剣道部員のべ17名で行い,結果を比較した.剣道経験が長い被験者ほど,平均聴力が低下する傾向がみられた.また,練習前と練習後に計測したオージオグラムとDPOAEを比較すると,1kHz付近と3~7kHzの領域では共に聴力が低下する傾向がみられた.ABRについては,練習後のⅠ波とⅡ波の反応が遅れる傾向がみられ,これは,Ⅰ波とⅡ波の発生源である聴神経と蝸牛核に影響があることを示唆している.一方で脳の中枢部分を発生源とするⅢ-Ⅴ波の反応は遅れが小さいため,脳の中枢部分へのダメージは小さいと考えられる. 実験Ⅱ「剣道打突時の骨導マップの作成」ヒト頭部模型と打撃装置を製作し,打撃時の面防具の加速度を計測した.加速度センサを面防具の打突部・頭頂部・左耳中央部の3箇所に取り付け,打撃装置で約150 Nの一定の打撃力を打突部に与えた際の加速度を測定した.また,打突部に緩衝材(α-GEL,β-GEL)を用いた場合の実験も行った.打撃実験の結果,打突部では緩衝材を用いた方が,頭部へのダメージが大きくなったものの,衝撃を吸収する時間は早くなることが示唆された. 一方,頭頂部と耳部では,緩衝材を使用した場合は加速度が小さい値を示した. 理論Ⅰ「面防具・ヒト頭部モデルを用いた打撃シミュレーション」打撃実験で得られた結果を,本研究室で構築した面防具モデルによるシミュレーション結果と比較した.モデルは実際の面に使用されている部品の寸法を測り,3次元CADソフトにより作成した.打突部におよそ100Nの衝撃を与えた場合の解析を行った結果,緩衝材を使用した場合でも,部位によっては応力が大きくなるという結果が得られた.これは打撃実験における結果と同様の傾向を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究実施計画」に記載されたすべての実験・理論解析を行い,ある程度の成果を得ることができた.ただし,実験Ⅱ「剣道打突時の骨導マップの作成」については,実施計画ではヒト頭蓋骨を用いた実験を,H26年度中に海外の研究機関(Stanford University)で行う予定にしていたが,そのほかの実験・理論解析の結果を吟味してから準備をすすめることにしたため,H26年中には実施せず,石膏を用いた頭部模型による実験を行った.
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今後の研究の推進方策 |
実験Ⅱ「剣道打突時の骨導マップの作成」については,ヒト頭蓋骨を用いた実験を海外の研究機関(Stanford University)で行う予定である.これまで得られた成果については,すでに実際に現地を訪問して報告を行い,現在,これに基づいて実験準備を進めている段階である.
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次年度使用額が生じた理由 |
「面防具・ヒト頭部モデルを用いた打撃シミュレーション」で使用する有限要素法ソフトについて(約60万円),平成26年度分のライセンスを購入する予定にしていたが,共同研究機関での使用が認められたため,平成26年度はシミュレーションを共同研究機関にて実施した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成27年度)については,前述の共同研究機関でのソフト使用ライセンスの更新は行わないため,申請者本人が実施計画通りにライセンスを購入し(約60万円,申請者の所属機関にて使用する予定である.
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