研究課題/領域番号 |
26350826
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
濱西 伸治 仙台高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (00374968)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 剣道難聴 / 衝撃力 / 骨導 / 有限要素法 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
頭部において最も衝撃を受ける頻度が高い打突部に着目し,頭蓋骨模型に竹刀で打撃を与えた時の振動である「骨導」の伝播を,模型に貼り付けたひずみゲージにより測定した.また,実験より得られた結果を,ヒト頭部モデルを用いたシミュレーションの結果と比較した. 打撃実験の結果,打突部以外では,前額部と後頭部でひずみが大きくなっており,打突による過大な骨導により脳組織に物理的なダメージを与えている可能性が示唆された.一方,耳部でのひずみは前額部や後頭部と比較して極端に小さく,耳部での骨導と聴覚器官へのダメージとの関連性は認められなかった. 打撃により発生した骨導の周波数成分を解析した結果,竹刀による打突により,0.01kHz付近,および0.1kHzと0.15kHz付近の骨導成分が発生していることが分かった.その他の測定部位においても,0.1kHzおよび0.15kHz付近のみで波形のピークが現れ,この0.1kHz付近での周波数成分の骨導が頭蓋骨全体を伝播している可能性が示唆された. これらの結果をヒト頭部モデルを用いたシミュレーションにより再現した.シミュレーションに用いたヒト頭部モデルは,頭蓋骨,脳などの軟組織に加え,複雑な聴覚器官も組み入れられた世界で初めてのモデルである. シミュレーションの結果,実験と同様に0.1kHz付近および0.15kHz付近で波形のピークが現れた.したがって,「骨導マップ」の作成が,ヒト頭部への打撃と骨導の関係明らかにするための有効な手法であるということが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の「研究計画」に記載した,実験Ⅱ「剣道打突時の骨導マップの作成」,および,理論Ⅰ「面防具・ヒト頭部モデルを用いた打撃シミュレーション」の内容をほぼ全て実施することができた.また,実験と理論での結果は同様の傾向を得られ,実験結果の理論的な裏付けも証明されている.
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今後の研究の推進方策 |
理論Ⅰ「面防具・ヒト頭部モデルを用いた打撃シミュレーション」について,ヒト頭部に面防具を装着したモデルを現在作成中であり,引き続きシミュレーションを進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理論Ⅰ「面防具・ヒト頭部モデルを用いた打撃シミュレーション」において,ヒト頭部と面防具を一体化したモデルと現在作成中であり,それらに関連する物品購入・成果発表を次年度に行うため.
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次年度使用額の使用計画 |
作成したヒト頭部と面防具を一体化したモデルを用いたシミュレーションを打撃実験による結果と比較し,それらの成果を,XXVI Congress of the International Society of Biomechanics(ISB2017, 23-27 July, Brisbane, Australia)で発表する.そのための物品費・旅費として使用する予定である.
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