研究課題
本課題では,長年にわたり剣道を続けてきたことにより発症すると考えられている「剣道難聴」の発生メカニズムの解明することが目的である.私たちは頭蓋骨を伝わる「骨導」に着目し,面防具への打撃によって発生した大きな骨導が,聴覚器官・頭蓋骨・脳の中枢にどのようなダメージを与えているのかを頭蓋骨を用いた計測(実験)により作成した「骨導マップ」と,有限要素法により構築した面防具・ヒト頭部モデルを用いた衝撃解析(理論)から解明することを試みる.今年度はこれまで骨導計測実験に用いてきた頭蓋骨模型をより実際のヒト頭部に近づけるため,脳組織に近い材質特性をもつゼラチンを模型に組み入れて同様の実験を行って「骨導マップ」を作成し,軟組織の有無による骨導を比較した.その結果,頭頂部・顎部・側頭部における骨導の大きさは軟組織の影響をほとんど受けないことが分かった.一方,打突部・後頭部・前額部では,軟組織を組み入れるとひずみが減少したが,後頭部の左右方向のひずみの減少割合は,比較的小さかった.この結果は頭蓋骨と脳組織で構成された有限要素法ヒト頭部モデルを用いた骨導シミュレーションでも同様の傾向を示した.従って,軟組織の有無に関わらず,打撃によって生じる骨導は,特に後頭部にダメージを与え,剣道難聴の原因となっている可能性があると考えられる.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Proceedings of the 2017 International Budo Conference
巻: Supplement ページ: 48-49
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