研究課題/領域番号 |
26350847
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
小田切 優子 東京医科大学, 医学部, 講師 (90276907)
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研究分担者 |
高宮 朋子 東京医科大学, 医学部, 講師 (40366133)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微量元素 / 過重労働 |
研究実績の概要 |
長時間過重労働は、抑うつや睡眠障害、心血管系疾患のリスクを高めることが疫学的検討により明らかとなっている。しかしながら過重労働からそれら疾病に至るメカニズムは複雑で未だ十分に解明されていない。一方、近年、動脈硬化やうつ病、がんといった疾患と生体内の亜鉛、セレン、カドミウム等の微量元素が関与することが指摘されている。そこで、長時間過重労働の者とそうでない者との間で、非侵襲的手法を用いて生体内微量元素を測定し、同時に健康診断データを入手、尿中8-OhDGの測定、質問紙によるストレスの評価を行い、動脈硬化指標やうつとの関連を検討することを目的とした。平成26年度は事業場の事情により、労働者を対象とした微量元素等の測定を含めた調査全体の実施が急遽不可能となったため、同一職場に勤務する7名の一般労働者(男性3名、全員非喫煙者、平均年齢41.1±6.7、BMI=22.5±1.5)に依頼し、OligoScanを用いた手掌による微量元素測定のみを行った。その結果、標準範囲からの逸脱は亜鉛で最も著しく、被験者中、通常の労働はこなしているものの慢性的な疲労を訴える被験者で最も低い値を示した。亜鉛欠乏はこれまでも食欲低下、味覚低下、皮膚症状、免疫力低下等との関連が指摘されているが、本検討において疲労症状との関連が見られたことから、次年度以降、過重労働の有無に加え、疲労症状も含めたデータ収集の必要性が推察された。また文献的検討を行い、カドミウムと動脈硬化についてはレビュー論文において心血管系疾患をアウトカムとした報告があるがそれ以外の脳梗塞等をエンドポイントとする報告は少ないこと、またメカニズムに関連する代替アウトカムについての検討が少ないことが明らかであり、研究実施の意義を再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年春の時点で、某事業場において、秋の健康診断時に生体内微量元素と8-OHdGの測定協力について、事業場の人事総務担当部長および健康管理室より内諾を得ていた。この事業場は長時間過重動労が常態となっているため研究の実施に適すると考えたためである。しかしながら、平成26年秋の労使交渉において、過重労働問題に関連して会社側と労働組合との間に問題が生じ、9月の健康診断の直前になって研究協力をいただくことが不可能となった。その時点で、通常は一年以内に一回実施される健康診断を年度内にまだ実施しておらず、研究協力を得ることができる事業場ということで急遽努力して探したが、協力をいただける事業場が確保できず、したがって過重労働の労働者を対象とした実質的データを得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
長時間過重労働者を含む事業場の労働者より同意の得られたものを対象として、生体内微量元素の測定、および酸化的DNA損傷の指標である尿中8-OHdGの測定を、本年6月に1事業場、本年9月に別の1事業場でベースライン評価として実施を予定している。あわせて健康診断データの取得を行うと同時に、職業性ストレス、抑うつ、疲労状態について調査票を用いて測定し、関連を検討する。本来ベースライン評価は初年度に行い、2年間のコホート研究として、生体内微量元素の変化と動脈硬化や抑うつ指標との関連を検討する予定であったが、ベースライン評価が遅れたため、1年間の変動データを用いて検討することとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
内諾を得ていた事業場においてベースライン評価のための調査が実施できず、少人数の労働者を対象とした基礎的データの取得にとどまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
OligoScanを用いた微量元素測定および8-OHdG測定にかかるコストについて、当初計画として初年度に計上していた分を、2年目に計上している。測定費用としてその他で支出する予定である。
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