研究課題/領域番号 |
26350853
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
崎田 正博 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (10582190)
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研究分担者 |
藤野 英己 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20278998)
村上 慎一郎 姫路獨協大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30454763)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 加齢 / 末梢神経 / 有髄線維退行 / 毛細血管退行 / 長期的運動介入 / 有髄線維構造維持 / 毛細血管再構築 |
研究実績の概要 |
従来、高齢者の転倒およびバランス能力低下の主要因にサルコペニア(加齢性筋力減弱症)が挙げられ、その予防には主として筋力増強が積極的に行われている。しかし、末梢神経の退行が高齢者の転倒やバランス能力の低下に関与していることが近年徐々に明らかとなってきた。本研究は、3年計画で加齢による末梢神経の退行変性を縦断的に解析し、また高齢期の長期的運動が末梢神経の退行予防や毛細血管の再構築に有用か検証し、予防法の開発を行うことである。 平成27年度は、中年期ラット(70週齢,n=6)の坐骨・脛骨神経を採取した。採取した検体サンプルから以下の実験手順に従い、解析を実施した。 1.ペントバルビタールナトリウム溶液を腹腔内注射による麻酔下で後肢の坐骨から脛骨神経一体を採取した。2.採取した検体サンプルの遠位部をイソペンタン凍結法にて凍結し、保存した。3.共焦点レーザー顕微鏡を用いて末梢神経内毛細血管の3次元構造解析を行い、毛細血管径・分枝(吻合)数を解析した。 平成27年度では、昨年度採取した若年群と今回採取した中年期群の検体が確保できたことである。神経栄養因子や血管増殖因子の発現量解析は、高年期群の神経を採取した後に開始するめ、27年度では若年群と中年群の毛細血管構築を比較した。末梢神経内毛細血管の3次元構造解析では中年期群の毛細血管径(p<0.01)および分枝(吻合)数(p<0.01)が若年群と比較して有意に減少していた。この結果から、若年期から中年期の時期において末梢神経内毛細血管の退行が生じていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、70週齢(中年期群)ラットの検体サンプルの採取であり、次年度に高年期群の検体サンプル採取し、若年群・中年期群・高年期群の比較検討する予定である。今年度のみで解析できる範囲では、共焦点レーザー顕微鏡による毛細血管像の確認であるため、この解析を主に実施できた点で概ね初年度の研究は達成したと思われる。髄鞘の生存および構造維持を規定する神経栄養因子・その受容体、またシュワン細胞をアポトーシスに誘導する因子の発現量に関しては、初年度にウェスタン・ブロット法を実施した。電気泳動およびウェスタン・ブロット法を繰り返し行い、BDNF発現量の検出可能なは検体サンプル量は概ね把握できたが、末梢神経のサンプル量が少ないことから発現量の同定が不安定であったことから、今後はELISA法を実施予定である。 毛細血管の構築の観察は、高精細な構築像の観察法を確立しているため、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は、高年期の運動群と非運動群の末梢神経を採取し、これまでに採取した若年期および中年期との組織学的・形態学的解析に加え、高齢期運動介入の効果を検証する。末梢神経有髄線維の髄鞘の生存および構造維持のマーカー(主にBDNF)・受容体と毛細血管の新生に関与するマーカー(VEGF)・受容体の発現量解析をELIZA法を用いて実施する予定である。また、毛細血管構築の観察解析の引き続き実施する予定である。
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