研究課題
本研究は、加齢による末梢神経の退行変性を縦断的に解析し、また高齢期の低強度運動が末梢神経の再修復(改善)や毛細血管の新生増加に有用か検証し、加齢性末梢神経の退行に対する改善法の開発を行った。①平成28年度は、高齢期群ラット(90週齢、n=6)と若年群(20週齢、n=6)の脛骨神経と毛細血管の構造比較を行った。高齢群のミエリン鞘径,軸索径は、若年群と比較して有意に減少した(P<0.01)。また、高齢群の毛細血管径と分枝数は若年群よりも有意に減少した(P<0.01)。加齢により脛骨神経内の有髄線維と毛細血管の両者の退行が明らかになった。高齢期の運動介入による末梢神経有髄線維の加齢性退行に対する改善効果を検証するため、95週齢の低強度運動群(n=5)とコントロール群(n=5)から末梢神経線維の修復・伸張促進因子であるBDNFと血管新生促進因子であるVEGFの発現量を脛骨神経組織と血清で測定(ELISA法)した。また、低強度運動群とコントロール群の脛骨神経の染色像を作成し、有髄線維の構造変化を比較した。低強度運動群の神経組織BDNFは、コントロール群と比較して有意な発現量の増加(P<0.01)を、VEGFでは有意に減少した(P<0.01)。高齢期運動群の血清BDNFの発現量は、コントロール群と比較して有意に減少(P<0.01)し、逆に血清VEGFの発現量では有意に増加した(P<0.01)。運動群の有髄線維径、ミエリン鞘径,軸索径は、コントロール群と比較し有意に増加した(P<0.01)。高齢期の低強度運動により血清に存在するBDNFは脛骨神経へ輸送され、有髄線維の修復と再生に寄与し、また脛骨神経から発現したVEGFは血液に輸送され、毛細血管の新生に寄与することが考えられた。つまり、末梢神経有髄線維と毛細血管は相互補完的作用を有すると考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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