学校教育の場では,障害のある子どもへの関心は高まりつつあるが,一方で具体的にどのような困難を抱えるかについては,十分認知されていない.そこで,障害児のための防災教育内容を検討し,それぞれの障害や認知特性に応じた柔軟な防災教育方法を確立することを本研究の目的とした. 小・中学校の教員を対象とした「防災教育における避難訓練に適応しづらい子どもに関する」調査結果では,教員が防災研修に高い関心を示す一方で,発達障害児に不適切な叱責をしたことがあると回答した教員は,小学校で31.9%,中学校で19.8%を示した.このことから,合理的配慮を伴う実践の必要性の声がある一方で実態が伴っていない状況が明らかとなった. このことを踏まえ,障がい者支援者とその保護者から必要な合理的配慮を聴取し,協働して発達障害のある子どもに対する防災教育における合理的配慮を伴う教育プログラムを作成した.そして,作成された教育プログラムに基づき,障がい者支援施設において,発達障害のある小学生に対してワークショップ形式の教育を実践した.また,ワークショップ実施後の支援者から留意点や気づいた点,課題について聞き取りを行い,教育プログラムの改良を重ねた. その結果,スケジュール表による見通しが立つ配慮,イラストや絵カードによる視覚支援,ロールプレイを交えた体験的学習などから構成されている教育プログラムは,発達障害のある子どもに対して教育的効果が示された.そして,これらのワークショップでの事例内容を整理し「発達障がいがある子のための防災教育指導事例集」を作成した.今後,本研究の成果を通じて,障害のある子どもたちの防災教育の改善や普及に繋がると考えている.
|