研究課題/領域番号 |
26350863
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中谷 直樹 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (60422094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性疾患 / 心理的側面 / ストレス / 抑うつ / 震災影響 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性疾患患者の心理社会的側面、生活習慣の詳細を明確化することである。『東日本大震災・被災者健康診査』のデータを用いることで、震災前と後の仕事の変化や生活習慣の変化についても検討できる点でその価値は極めて高い。本年度は、「慢性疾患患者は非患者に比し、抑うつ、ストレスが高い」という仮設の検証を目的とした。 調査対象者数は7036人であり、6840人(97%)に質問紙を配布し、4949人(70%)より有効回答を得た。慢性疾患既往歴の有無は調査票による自己回答の脳卒中、心筋梗塞・狭心症、腎臓病、肝臓病、がん、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の8疾患とし、ストレスの評価にはK6を、抑うつ症状の評価にはCES-Dを用いた。 ストレスに関しては、K6に欠損のないものかつ40歳以上のもの3032名を解析対象とし、160名(5%)がスコアが13点以上で強いストレスを感じていた。強いストレスありの割合は、高齢者、女性、経済的に苦しいもの、大規模半壊以上のものなどで高かった。慢性疾患なし群に対するあり群の強いストレスのオッズ比は、心筋梗塞・狭心症で1.8 (95%信頼区間 1.0-3.0)、肝臓病も3.1 (1.0-7.7)と有意に高かった。 抑うつに関しては、CES-Dに欠損のないもの3016名を解析対象とし、779名(26%)がスコアが16点以上で抑うつありであった。抑うつありの割合は、高齢者、女性、経済的に苦しいもの、大規模半壊以上のものなどで高かった。慢性疾患なし群に対するあり群の抑うつのオッズ比は、多変量補正で1.5(1.2-1.8)と有意に高かった。疾患別でも、全ての疾患で抑うつが高い傾向が認められた。 本研究により、慢性疾患患者が強いストレスおよび抑うつ傾向を有することが示され、身体面のみならず心理面のサポートが喫緊の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に解析予定であった慢性疾患患者の心理的側面に関しての解析は終了しており、来年度部分の一部である慢性疾患患者の社会的側面に関するエビデンステーブルの作成、解析などに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、順調に研究を遂行しており、今後さらに有意義な研究成果を得られるよう鋭意検討を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.日本疫学会を不参加としたことで、旅費支出が少なかった点:日本疫学会の参加を予定していたが、同日、国立精神・神経研究センターでのシンポジウム講演を依頼された。そのため、日本疫学会を不参加としたことで、旅費支出が少くなった。 2.研究協力者に対する謝金に関する点:本研究は、研究代表者が研究協力者の補助により調査を実施している。平成27年3月分の謝金は、来年度、平成27年4月に支払うことを予定しているため、1か月分の謝金の支出が少くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の使用計画としては、国内学会に積極的に参加し、最新の医学研究を勉強し、本研究に役立つ情報を収集したいと考える。また、平成27年3月分の研究協力者に支払う謝金を、来年度早々に支払うことを計画している。
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