本研究では、東日本大震災のデータを用いて、慢性疾患患者(脳卒中、心筋梗塞・狭心症、腎臓病、肝臓病、がん、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症)の心理的・社会的側面、生活習慣、震災影響を明らかにすることで、慢性疾患患者に対するサポートの必要性を検証した。調査票は平成24年10月から配布を開始し、調査対象者7036人のうち6840人(97%)に配布し、4949人(70%)より有効回答を得た。その結果、慢性疾患がないものに比し慢性疾患があるものは抑うつ、ストレスのスコアが高い者の割合が有意に多いことが示された。疾患別では、心疾患でストレスのスコアが高いものが有意に多く、高血圧、糖尿病、高脂血症で抑うつのスコアが高いものが有意に多いことが示された。社会的側面では、慢性疾患がないものと慢性疾患があるものの仕事の有無や収入、社会的孤立の有意な差は認められなかった。疾患別では、心疾患で生活が苦しいと回答したものが有意に多かった。生活習慣では、慢性疾患がないものと慢性疾患があるものの飲酒、睡眠、活動量の有意な差は認められなかった。喫煙に関しては、慢性疾患がないものに比し慢性疾患があるものでは喫煙者が有意に少なかった。震災影響では、小規模半壊で慢性疾患患者でないものに比し大規模半壊以上で慢性疾患のあるもので抑うつ、ストレスのスコアが高いものが有意に多いことが示された。同様に、住居の見通しが立っていて慢性疾患患者でないものに比し住居の見通しが立っていなくて慢性疾患のあるもので抑うつ、ストレスのスコアが高いものが有意に多いことが示された。一方で、震災前後の社会的側面および生活習慣の変化では有意な差は認められなかった。本研究より、慢性疾患患者は非患者に比し有意に高い心理的負担を有していることが明らかになった。
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