研究課題/領域番号 |
26350867
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研究機関 | 天使大学 |
研究代表者 |
佐藤 香苗 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (40405642)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 通所介護(デイサービス) / 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) / 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) / 安静時エネルギー消費量 / 推定エネルギー必要量 / 栄養状態 / QOL |
研究実績の概要 |
認知症の診断を受けた札幌市の通所介護利用者48名、認知症対応型共同生活介護(グループホーム;GH)入居者27名、介護老人福祉施設入所者68名、計143名(男性44名・平均82.6歳、女性99名・平均87.9歳)を対象にベースライン調査[体格(身長、体重、上腕・下腿周囲長)、安静時エネルギー消費量(REE)、要介護度、認知症高齢者・障害高齢者の日常生活自立度、Barthel Index、Mini Nutritional Assessment - Short Form (MNA)、認知症の基礎疾患、認知症以外の現病歴、服薬数・種類等、MMSE、BPSD、GBSS、Behave-AD、QOL-D、 非連続二日間の食事(秤量記録・写真撮影法の併用)]を終了した。 本研究は認知症高齢者に適う栄養ケアモデル構築を目的としているため、まず、エネルギー必要量について検討した。実測REEと5種の基礎代謝量推定式から算出した推定REEとの相対誤差が大きかったため、重回帰分析により新たなREE推定式を構築した。 栄養状態については、MNAを用いると認知症高齢者の低栄養状態は深刻であったが、過小評価が強く疑われた。一方、BMI25以上者も25%程度と体格の二極化が認められた。 栄養摂取面では、食物繊維摂取量不足の改善が喫緊の課題である。カルシウム摂取量も全般に推奨量を下回っていたが、その傾向は牛乳の摂取量が少ないことに起因して通所介護利用者で特に強く認められた。牛乳・乳製品は認知症発症リスクを抑えることが知られているため、在宅の認知症高齢者へのアプローチが必須である。 本研究で構築した推定式から算出した推定エネルギー必要量に対する従来方式の相対誤差と残食率との間に有意な相関が認められ、このことからも適切な栄養ケアモデルの必要性が示唆された。これらの研究成果を認知症ケアに関連する複数の専門学会で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知症高齢者のエネルギー必要量について、従来の方法による推定は困難であることを明らかにし、REEの予測因子として認知症高齢者の体重、身長、年齢、性を説明変数とする新たな推定式を構築した。 また、栄養摂取の現状との関連分析から、認知症高齢者に適う新たなエネルギー必要量の推定法を確立できた。さらに、栄養摂取の課題を明らかにし、新規栄養ケアモデルの骨子を固めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、認知症高齢者のためのエネルギー必要量の推定方法(栄養ケアモデルの骨子)が構築できた。今後は、実際に現場で使用して、その有効性を科学的に検証する。また、本研究は認知症高齢者のQOLの維持向上に寄与する新規な栄養ケアモデルの構築を目的としている。そのため、QOLの規定因子と栄養状態・栄養摂取との関連性の有無を明らかにし、特に地域で暮らす認知症高齢者のための栄養ケアモデルの構築につなげる。 栄養摂取の面で大きな課題となった食物繊維の摂取量不足については、GH入居者や通所介護者を対象に、摂食嚥下機能にマッチした調理法や手軽に実施できるレシピの開発・普及に努める。開発した栄養ケアモデルを実践し、運用後も現任者の意見を反映させるメンテナンスシステムを構築し、常に改善向上に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次の2点により、食事調査費用が予定額を下回った。①通所介護利用者の食事調査は介護者の同意を得ることが想像以上に困難で、協力者は10名にとどまった。②グループホームの食事調査については、介護老人福祉施設の管理栄養士等の協力を得たため、調査日数を減らすことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
認知症高齢者の咀嚼、食塊形成、嚥下機能低下に対応したレシピを開発し、食物繊維やカルシウムの摂取量を増加させるための栄養支援を行う。その食材費や人件費に使用する予定である。また、その普及のための教材の作成費用にあてる。さらに、現任者が多数所属する専門学会での発表や論文投稿費用に使用する。
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