研究課題/領域番号 |
26350867
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研究機関 | 天使大学 |
研究代表者 |
佐藤 香苗 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (40405642)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) / QOL / Vitality Index / 栄養状態 / 排便障害 / 食事の多様性 / 栄養パウダー |
研究実績の概要 |
本研究は認知症高齢者のQOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルの構築を目的としている。認知症高齢者153名のQOLをQuality of life instrument for the Japanese elderly with dementia(QLDJ:3領域24項目)を用いて測定した。「周囲との生き生きとした交流」領域で栄養食事摂取と有意な関連が認められたため、当該得点を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行い、その結果に基づき栄養パウダー(栄養機能食品と栄養補給食)を添加した「豚大豆」「ジャガイモおきあみ」「鮭ホタテ」「鶏チーズ」「中華風レバー」、計5種類の「おかず団子」を考案した。本研究における「おかず団子」とは多様な食材を使用し、不足しがちな栄養素を補うと同時に食への関心・意欲を高め、食事動作の自立を促すことを目的としたアレンジ可能な常備菜のことをいう。 「おかず団子」の受容性と実用性を7段階評点法によって評価し、両試験の成績が上位であった「豚大豆」「ジャガイモおきあみ」「鮭ホタテ」の3種類を採択した。エネルギー・主な栄養素(荷重平均値)は、エネルギー40.3kcal、たんぱく質4.04g、食物繊維総量0.46g、カルシウム22.5mg、亜鉛0.67mg、食塩相当量0.06g、価格は31.0円である。 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の入居者26名を対象に、20g/日の「おかず団子」を通常の食事に4週間連続付加する介入群と通常の食事を4週間摂取する対照群に分け、2週間のウォッシュアウト後、2クールめでは2群を交差するクロスオーバー比較試験を実施した。「おかず団子」の付加によって、排便障害・栄養状態の改善ならびにVitality Index(起床、意志疎通、食事、排泄、リハビリ・活動)および「周囲との生き生きとした交流」領域得点の有意な上昇を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、「おかず団子:多様な食材を使用し、不足しがちな栄養素を補うと同時に食への関心・意欲を高め、食事動作の自立を促すことを目的としたアレンジ可能な常備菜」を開発し、認知症高齢者にとっての受容性と実用性試験を実施した。 さらに、「おかず団子」を提供する新規な栄養ケア介入を認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で実施し、入居者の排便障害・栄養状態の改善ならびにVitality Index(起床、意志疎通、食事、排泄、リハビリ・活動)、QOL(周囲との生き生きとした交流)の向上を確認した。 以上のとおり、「認知症高齢者のQOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルの構築」という本研究の目的達成に向けて、介入施設はグループホームに限定されたものの、堅実に前進できたことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のこれまでの主たる成果として、認知症高齢者の「認知機能別・至適エネルギー必要量の推定方法の確立(安静時エネルギー消費量の推定式構築)」「食事特性の解明」「QOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルの開発と運用」があげられる。 今後は、認知症高齢者の栄養ケアにかかわる現任者らと連携を深め、開発した新規栄養ケアモデルの運用成果を評価し、改善向上を図る。 また、専門学術学会での発表や論文投稿によって、広く情報発信を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)おかず団子の製作には、新調理システム(クックフリーズ・真空調理)を取り入れた。提供方法について、「家庭で行うHACCP」を参考に提供マニュアルを作成し、現場のカウンターパートをはじめ関係者全員の共通理解を得た。これにより、計画生産が可能となり、食材料費、水光熱費、施設使用料、人件費および交通費が当初の予定より大幅にダウンした。一方で、介入前の生産・提供マニュアルの作成、研修会に時間を要したため、予定していた国際誌への論文投稿には至らなかった。 (使用計画)国際誌論文投稿料、英文校正費、別刷費等に使用する。また、成果発信のため、専門学術学会での公表はもとより、現任者に向けたセミナーや一般向けワークショップ・公開講座を連携研究者らと協働して、企画・開催する。さらに、認知症高齢者のケアを行う専門職者への新規栄養ケアモデルの普及・啓発に努めるとともに、現場の声を反映させるメンテナンスシステムを構築する。
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