本研究は認知症高齢者のQOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルの構築を目的とした。 最初に、認知症高齢者の至適エネルギー必要量を推定するため、100名の実測値から認知機能別の安静時エネルギー消費量(REE)の推定式を構築した。次に、95名を対象として、春夏秋冬連続7日、計28日間の半秤量食事記録法調査を行い、食物繊維、カルシウム、亜鉛の摂取量が少ないことを明らかにした。 QOLについては、Quality of life instrument for the Japanese elderly with dementia(QLDJ:3領域24項目)を用いて153名を対象に測定・分析したところ、「周囲との生き生きとした交流」領域で栄養食事摂取との有意な関連を見出した。Vitality Index(VI)と食事動作の自立との強い関連性も報告されていることから、食への関心・意欲を喚起させ不足しがちな栄養素や食品群を集中トリートメントする栄養介入によって、認知症高齢者のQOL向上に寄与できる可能性が示唆された。 そこで、栄養機能食品を添加した3種類の「おかず団子」を考案した。おかず団子は栄養補給に加え食思不振改善や食事動作の自立支援を目的とした常備菜で、アレンジ可能である点で継続摂取を狙ったものである。グループホーム入居者を対象としたクロスオーバー試験の結果、排便・栄養状態の改善とVIおよび「周囲との生き生きとした交流」領域得点の有意な上昇を確認した。 平成30年度は、認知症高齢者の嚥下機能状態への適応度の確認と製造工程における作業の標準化・品質管理を目的としておかず団子の物性(硬さ・付着性・凝集性)を測定・評価した。嚥下調整食分類2013にあてはめて評価すると、硬さ・付着性・凝集性ともに嚥下調整食3から4に分類された。おかず団子は認知症高齢者の嚥下機能にも適合し、通常の食事への付加という簡便さやアレンジ可能性を有し低コストであることから、新規栄養ケアモデルとして普及に結びつくものと考える。
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