研究課題/領域番号 |
26350873
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
佐藤 忠章 東邦大学, 薬学部, 講師 (80287549)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 植物精油 / 揮発成分 / 抗不安作用 / 鎮静作用 / 吸入投与 / 脳内移行 |
研究実績の概要 |
今回の申請では芳香植物療法の使用基準作成のための科学的な基礎データの取得を目的として,植物精油とその成分(代謝物)の吸入投与による脳内への移行性(残存性)と発現する効果との関係を明らかにするために研究を行っている. 植物精油が情動行動に及ぼす影響と脳内に移行した成分との関係を明らかにする一環として,我々は白檀抽出物のマウスに対する抗不安様作用を明らかにした.さらに,その活性本体となる化合物を明らかにするために研究を行った.白檀抽出物をGCにより成分分析を行ったところ,(+)-α-santalolを50%含んでいることが明らかとなった.そこで,(+)-α-santalolを用いてマウスを用いて不安関連行動評価を行った.しかし,(+)-α-santalolの吸入投与によって抗不安様作用は認められなかった.その一方で自発運動量の低下傾向が認められた.さらに(+)-α-santalolの腹腔内投与を行ったところ,コントロールと比較して有意な自発運動の低下を示した.すなわち,(+)-α-santalolには鎮静作用があると考えられる.さらに,この(+)-α-santalolは脳内からも検出されたことから,(+)-α-santalolの鎮静作用は,この成分が脳へ移行して作用していると考えられる. この結果は,香りの効果を解釈する上で,嗅覚刺激だけではなく脳へ移行した揮発成分の効果であることを示した重要な知見であると考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には,植物精油成分の種類と脳内移行性と抗不安様作用の関係の解明,植物精油成分の種類と脳内での残存性と抗不安様作用の関係の解明,植物精油成分の種類と代謝物と抗不安様作用の関係の解明を目的として研究を行った. 具体的には白檀抽出物の主成分である(+)-α-santalolを用いて,本来予想していたようなマウスに対する抗不安様作用は認められなかった.しかしその一方で(+)-α-santalolの腹腔内投与は有意な鎮静作用を示した.そして脳内からも対応する化合物が検出されたことから,脳内に移行した成分とその効果との関係解明に一歩近づくことができたと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降では,植物精油の成分組成と脳内移行性と抗不安様作用の関係の解明,植物精油の成分組成と脳内での残存性と抗不安様作用の関係の解明,植物精油の成分組成と代謝物と抗不安様作用の関係の解明を目的として研究を行う予定である. 具体的には,植物精油の種類によって,化合物の種類によって脳内への移行性が異なる傾向がこれまでの我々の研究において得られている.今回,鎮静作用と脳内の成分量との間に相関が認められたα-santalolはアルコール体であり,同様にラベンダー精油の主成分であるlinaloolなどのアルコール体は,吸入投与において効果は得られるが脳内からは検出できていない.そしてアルコール体は腹腔内投与によって脳内から十分な量が検出されている.一方,α-pineneやlimoneneなどの炭化水素系は,吸入によって効果が得られると同時に脳内からも検出されている.この化合物種や化合物の組み合わせの違いによる効果と脳内移行の関係を化合物の種類を変えて明確にすることで,多成分からなる植物精油の効果の解明に近づけたいと考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の途中において,植物精油の化学成分を分析するための機器(GC/MS)の故障等により途中で研究が止まってしまったことが原因の一つと考えられる.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降は,分析装置が正常に使用可能となったため,当初の予定通り化合物の種類や組み合わせを変えて情動行動と脳内移行との関係解明に向けて研究を行う予定である.
|