本研究では,臨床実習での睡眠の影響による脳波変化を評価することを目的とした。被験者は,本学学生4年生12名であった。ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて臨床実習前後での睡眠の質の変化を4グループに分けた。簡易脳波計を用いて脳波を実習前後に測定した。脳波は高速フーリエ変換を行い,パワースペクトル値を算出した。α波帯域のパワースペクトル値結果からは、実習前には睡眠が良好であり臨床実習で睡眠不足に陥ったグル-プでは、実習後でα波が有意に低値を示した。α波はリラックスや平穏な状態時に多く見られα波が低下したことは,精神的に不安定になったと考える。 睡眠不足の状態では,精神面での健康問題との関連も強く,前頭葉機能が低下し感情コントロールが十分機能しなくなり、短期間の睡眠不足であっても,健康成人においては編桃体と復側前帯状皮質間の機能的接続が減弱し,情動的な不安や抑うつのリスクが増大したと考えられる。また睡眠の問題は,集中力や記憶力の低下,日中の作業効率の低下,昼間の疲労感や眠気など,心身の健康や活動機能に様々な活動に悪影響を及ぼすとされる。これらの悪影響を考えると,睡眠の問題を改善することは学生の生活の質の向上のためだけではなく,健康問題にも重要であると考えられる。 今後の課題としては,サンプル数を増やし尺度の標準化を行い,再現性のある研究に発展させ,一般化した知見とすることを目標として行きたい。さらに,学生に対してフィードバックを行い,睡眠が改善することによって,健康問題,学業上の問題を予防・改善へ繋がっていくことを検証していきたいと考えている。
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