研究課題
平成26年度に骨格筋不全モデル(高脂肪食負荷糖尿病モデル、アンジオテンシンII投与高血圧モデル、心筋梗塞後心不全モデル)を作成し、運動能力が低下し、骨格筋不全(ミトコンドリア機能障害、骨格筋線維型変移、骨格筋萎縮)を呈することを確認した。さらに、骨格筋において、mitoNEETタンパク発現の減少とともに、ミトコンドリア鉄容量が増加し、酸化ストレス産生が増加した。平成27年度にmitoNEET欠損マウスを作成し検討を行った。3か月齢ではミトコンドリア内の鉄容量の増加や酸化ストレスの亢進は確認されたが、ミトコンドリア機能は保持され、運動能力は違いがなかった。一方、12か月齢のmitoNEET欠損マウスではミトコンドリアの形態異常、機能異常と同時に、運動能力の低下が確認された。mitoNEET欠損によるミトコンドリア内鉄容量の増加の機序の検討を行った。これまで知られていた鉄流入や流出に関わるタンパクに変化がなかった。そこで、タンパク相互作用を検討したところ、鉄代謝に関わる細胞質タンパク(X)とミトコンドリア内へ物質を輸送する可能性があるミトコンドリア内膜タンパク(Y)とmitoNEETが結合することを見出した。またYを抑制することにより、鉄流入が抑制されることも明らかとなった。本年度は、mitoNEETを安定化させることが知られているピオグリタゾンの骨格筋不全に対する効果を検討した。ピオグリタゾンの投与によって、骨格筋不全モデルの運動能力が改善し、骨格筋不全が改善した。本研究によってmitoNEETの骨格筋不全に対する役割が明らかとなった。骨格筋不全は慢性疾患において共通して観察される現象であり、高齢化社会において極めて重要なターゲットである。さらに本研究を発展させ、mitoNEETタンパク制御に基ずく治療法の開発へ発展することが可能と考えられる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
J Moll Cell Cardiol
巻: 100 ページ: 43-53
10.1016/j.yjmcc.2016.09.013.
J Clin Invest
巻: 126 ページ: 3403-3416
10.1172/JCI85624.
Cardiovasc Res
巻: 111 ページ: 338-347
doi: 10.1093/cvr/cvw182.
Eur J Pharmacol
巻: 779 ページ: 147-156
10.1016/j.ejphar.2016.03.022.