研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は、単純性脂肪肝と非アルコール性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に大別される。NAFLDの病態評価は、これまで主に肝生検と血液検査、そして画像検査の形態情報により行われてきたが、本研究は画像が持つ機能情報に着目した点に新規性がある。 本研究は、データ取得の最適化、臨床データ(機能画像情報)の取得、機能画像情報に基づいたNAFLDの重症度分類(スコアリング)の3つのステップにより進めた。第1ステップとして、MRIデータ(MR spectroscopy, MR perfusion, MR diffusion等)と超音波データ(硬さ, 脂肪量)を取得するための撮像パラメータの最適化に成功した。第2ステップとして、最適化したパラメータを使用して、ボランティアとNAFLD患者を対象に、機能画像情報(MR, 超音波)と血液・体組成データを取得した。最終ステップとして、第2ステップで得られたデータを利用し、当初の目標である機能画像情報からNAFLDの重症度を分類することに成功した。 本研究は、病態との関連という観点から機能画像情報をスコアリングし、より客観的な診断指標を構築する点に特色がある。さらに、NAFLDの発生に深く関与している糖脂質代謝をコントロールしている肝臓と骨格筋の機能情報を複合的に評価するというこれまでにない新たな視点での診断手法を取り入れる点に独創性があると考えている。この手法はNAFLDだけでなく、糖尿病を中心とした生活習慣病の病態評価にも応用でき、生活習慣病が国民的関心事であることを考えれば、その社会的意義は大きい。
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