研究課題/領域番号 |
26350888
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 誠 大阪大学, 保健センター, 准教授 (00379273)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血清マーカー / 動脈硬化リスク / 頸動脈エコー / 内臓脂肪 / 健康診断 |
研究実績の概要 |
平成20年から実施されている特定健診では、検査項目と問診項目により、40歳以上の対象者から生活習慣病ハイリスク集団を抽出し保健指導を行っており、その成果が注目されている。しかし、20代、30代の健診受検者は、検査項目が異常になることは少なく、将来の生活習慣病発症リスクを効果的に予測する方法は確立されていない。本研究では、平成16年より他健診施設に先駆け開始した腹囲、内臓脂肪測定、頸動脈エコーを含む約10年の経時的データを用い、早期動脈硬化を含む生活習慣病発症・進展に対する予測因子を若年者においても検討し、より幅広い年代に対応できるWeb問診・健診・指導システムの確立をめざすものである。 本年度は、包括同意を得られた余剰血清を用い、食後高脂血症や早期動脈硬化の新たな血清マーカーとして注目されつつあるアポB48に関して、肥満やメタボリックシンドロームの危険因子の集積とともに上昇すること、正脂血症者の正常値として5.7μg/mlが適当であることを提唱し、論文が掲載された。また、喫煙女性が内臓脂肪の蓄積しやすい状態になっていることも論文報告した。 さらに生活習慣病や老化との関連が示唆されるFGF19,21、epiregulin、αKlothoも新たに測定を開始した。その結果FGF21が特定の集団で、肝機能やコレステロール値と相関すること、αKlothoが特定の集団で上昇し、炎症と関連すること、特定の生活習慣問診に関連して上昇していることを見いだした。この結果は論文化しており、現在リバイスを投稿している。そして今後の縦断的な解析にむけて、問診、病歴を含む10年間の健診データのデータベース化を行いほぼ完了した。 以上、本年度はこれまで研究を行ってきたアポB48等の血清マーカーに加え、新たにFGF21とαKlothoの有用性を明らかにし、縦断的解析の準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、[新たな血清マーカーと生活習慣病関連検査、内臓脂肪蓄積、頸動脈硬化との関連の横断的検討]および[生活習慣関連の問診項目と生活習慣病関連検査、内臓脂肪蓄積、頸動脈硬化との関連の横断的検討]を実施する予定としていた。 新たな血清マーカーとしてデータを蓄積してきたアポB48について、論文報告ができたこと。今回、新たに測定を始めたマーカーのうち、FGF21とαKlothoの有用性を確認でき、論文化できるデータを得られたこと。以上より新たな血清マーカーに関しては十分に本年度の目標を達成したと考えられる。 また、問診項目に関しては、単年度の検討では、喫煙等である程度の結果がえられ報告したものの、その他報告に値する有意な結果は得られなかった。そこで2004年から2014年まで年度で異なる問診フォーマットを統一し約67000名のデータをデータベース化した。さらに病歴データを詳細に確認し入力を続け、ほぼ完了した。 これにより問診項目に関しても、より幅広い年代に対応できる問診システムの確立という当初の目的に近づきつつある状況である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通りの以下の計画を推進する。 平成26年度になると、平成16年から測定している内臓脂肪および頸動脈硬化を10年間経過観察できる症例が抽出できるようになる。 10年の経過観察例より、内臓脂肪蓄積症例と対照症例、および動脈硬化進展症例と対照症例につき、若年者を中心に100名ずつ目標に抽出。血清マーカーの測定を行い予測因子としての有用性を評価する。問診項目の評価は、なるべく多数の内臓脂肪測定、頸動脈検査、長期経過観察症例を用いて予測因子としての有用性を調べる。 問診のWeb化を行い、内臓脂肪蓄積、頸動脈硬化進展、生活習慣病発症を指標に予測因子として有用な問診項目をさらに詳しくするとともに、不要な問診項目を簡素化する。 以上、若年者での生活習慣病発症予測因子が明らかになった場合、若年者ハイリスク集団を特定し、集団教育・指導を試みる。
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