研究課題/領域番号 |
26350889
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上田 修司 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50379400)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋肉 / ヒートショック蛋白質 / 運動 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
骨格筋は、筋収縮によって生じる活性酸素、熱、切断からその構造を守るため、多くの分子シャペロンが機能している。HSPBsは、低分子量ヒートショック蛋白質の一群(アイソフォーム10種類)で、老化、炎症、損傷など細胞ストレス、特に筋肉トレーニングによって発現が誘導されるシャペロン分子である。様々な細胞状態に応じてシャペロン機能を発揮するHSPBsであるが、そのシャペロン標的分子群は殆ど不明である。本研究では、運動後の筋細胞における各HSPBアイソフォームの分子シャペロンの標的分子及びその調節分子について、BirA酵素標識法を用いて網羅的に解析し、筋肉増加に有益なHSPBsを明らかにすることを目指している。 本年度は、運動負荷に伴う筋肉増加に関与するHSPBsのシャペロン機能の解明のため、自作の細胞伸展装置を作製し、伸展伸縮刺激を加えた筋細胞におけるHSPB1のシャペロン標的分子群をBirA酵素標識法で識別し、プロテオーム解析によって網羅的に同定を試みた。また、HSPBsの細胞内動態の詳細を理解するため、BirA融合HSPB1(BirA-HSPB1)によってリジン残基がビオチン標識されたビオチン化蛋白質をストレプトアビジン結合により検出し、それらの細胞内動態を蛍光顕微鏡下で可視化することを試みた。また、HSPB1の相互作用分子候補の同定に向けた特異的抗体による結合確認実験の分析条件の検討、最適な伸展伸縮刺激の指標となる細胞形態、分子マーカーを明らかとした。更に、これらの研究を継続的に進めることで、運動負荷時のヒートショックタンパク質の役割の解明に繋がると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞(HEK293細胞、C2C12細胞)にBirA-HSPB1発現プラスミドを遺伝子導入し、ビオチン添加依存的にBirA-HSPB1によるタンパク質のビオチン標識の増加を確認した。培養細胞に過酸化水素水による過酸化刺激を施したところ、細胞障害による細胞の プログラム死 (アポトーシス) の誘導が確認され、細胞数の低下、ストレスによるHSPB1の細胞内局在移行を確認した。HSPB1のシャペロン活性の視覚的な検出に向け、BirA-HSPB1を発現した細胞を蛍光免疫染色し、顕微鏡下で観察したところ、BirA-HSPB1によるタンパク質のビオチン化を可視化することに成功した。これらの結果よりBirA酵素標識法を用いてHSPB1のシャペロン機能の解析技術の構築に一定の目処を立てることができた。これらのことから本研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、HSPBs間における相互作用分子のパターン分布の比較解析を進め、質量分析によりHSPB1と相互作用する蛋白質の同定を進める。また、筋細胞の伸展収縮による運動モデルからそれぞれのHSPBsの相互作用分子の比較を引き続き進め、BirA-HSPBsによる標的蛋白質のビオチン化標識の程度と分子シャペロン活性の定性的な推量に関するる実験精度を更に高める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の会計処理の期間が限られており、金額が僅かである理由から一部の試薬の購入を次年度に先送りにした。そのため、次年度に僅かであるが次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、年度開始後、速やかに試薬購入の執行に充てる計画である。
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