研究課題
脂肪酸エタノールアミドは種々の長鎖脂肪酸とエタノールアミンが縮合した構造を持つ脂質メディエーターであり、多彩な生物活性を持つことが知られている。なかでもオレオイルエタノールアミドは食欲抑制や脂肪分解といった作用を示し、生活習慣病の最大の原因である肥満を抑制的に制御すると考えられる。しかしながら、その動物組織における生合成過程および責任酵素は十分に明らかではない。そこで本研究課題では、特殊なリゾ型リン脂質であるN-アシルエタノールアミンリゾリン脂質から脂肪酸エタノールアミドを遊離するリゾホスホリパーゼD(リゾPLD)型酵素に焦点を当て、脂肪酸エタノールアミドの生合成における当該酵素の役割を解明することを目的としている。本年度においては、機能未知の蛋白質であったグリセロホスホジエステラーゼ4 (GDE4)がin vitroにおいてN-アシルエタノールアミンリゾリン脂質から脂肪酸エタノールアミドを遊離するリゾPLD活性を有することを見出した。すなわち、ヒト胎児腎臓HEK293細胞に一過性に強制発現させたGDE4を用いて、GDE4が当該リゾPLD活性を持つことを示した。さらに本酵素の精製標品を調製して詳細な触媒特性解析を行い、GDE4の基質特異性が非常に広いことを明らかにした。すなわち、N-アシルエタノールアミンリゾリン脂質だけでなく、リゾホスファチジルエタノールアミンやリゾホスファチジルコリンのような通常のリゾ型リン脂質にもGDE4はリゾPLD活性を示してリゾホスファチジン酸(LPA)を生成した。以上の結果から、GDE4は脂肪酸エタノールアミドやLPAの生合成に関わる新規リゾPLD型酵素である可能性が提示された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究実施計画のうち、「新規リゾPLDのin vitroでの機能解析」については、機能未知の蛋白質であったGDE4が当該リゾPLD活性を有することを初めて明らかに出来た。さらに詳細な機能解析により、本酵素がLPAの生合成にも関与する可能性を提示した。「新規リゾPLD遺伝子欠損マウスの作成と脂質分析」については準備段階にある。以上のことから、項目毎の達成度については課題があるが、全体としておおむね順調に進展していると言える。
新規リゾPLDとしてのGDE4の機能解析をさらに進展させたい。また、機能未知の別の酵素が類似のリゾPLD活性を持つ可能性を示唆する予備的結果を得ていることから、本酵素の機能解析も併せて推進したい。
ごく少額の端数(17円)が生じたため。
翌年度分として請求した助成金と併せて、実験に必要な薬品などの消耗品を購入する計画である。
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Pharmacol. Res.
巻: 86 ページ: 1-10
10.1016/j.phrs.2014.04.001
http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~biochem/index.html