研究課題/領域番号 |
26350895
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岸本 裕歩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00596827)
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研究分担者 |
吉田 大悟 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10596828)
秦 淳 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00448432)
熊谷 秋三 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80145193)
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動習慣 / 健康寿命 / 前向き追跡研究 / 地域住民 / 久山町研究 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、余暇時の運動習慣および身体活動量と健康寿命との関連を前向きに検討した。対象は1988年の久山町循環器健診を受診した65歳以上の住民のうち、日常生活動作(ADL)障害がなく、余暇時の身体活動の情報が得られた507名(男性182名、女性325名)であった。健康寿命はADL障害を発生せず生存、ADL障害を発生せず死亡、ADL障害を発生せず平均余命の到達(昭和63年時の厚生労働省の推算値)のいずれかと定義した。余暇時の運動習慣は週1回以上の運動実施と定義した。次に、運動習慣あり群について、週あたりの身体活動量(メッツ・時/週)に基づき3分位に分け、運動習慣のない群を加え計4群で解析した。その結果、追跡中に171名が健康寿命を到達した。運動習慣あり群の男性の割合は運動習慣なし群に比べ有意に高かったが、その他の背景因子に2群間の違いはなかった。余暇時の運動習慣あり群の健康寿命到達のハザード比は、運動習慣なし群に比べ1.37倍(95%信頼区間:0.93~1.94)高かったが、統計的有意差を認めなかった。この関連は多変量で調整しても変わりはなかった。余暇時の身体活動量のレベル別にみると、身体活動量の高値群における性年齢調整後の健康寿命到達のハザード比は、運動習慣なし群に比べ1.62倍(95%信頼区間:1.01~2.56、p<0.05)有意に高かった。多変量で調整すると、この関連は1.64倍(95%信頼区間:0.99~2.72、p=0.05)とマージナルであった。以上より、地域高齢住民では、余暇時の運動習慣と健康寿命との間には有意な関連は見出せなかった。一方、余暇時の身体活動量は、他の危険因子とは独立して健康寿命と正の関連にある傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していたデータセットの整備完了と解析着手が達成された。本テーマに関連する学会に出席し、最新知見の収集や他研究者との意見交換もできた。平成28年度には、余暇時の運動習慣および身体活動量と健康寿命の関連の解析を詳細に分析・追加する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
追跡調査を継続し、データセットの精度を高める。また、余暇時の運動習慣および身体活動量と健康寿命の関連の解析を追加する。さらに、得られた研究成果を研究分担者・統計専門家と協議し国内外の学会で発表するとともに、運動と健康寿命の関連について最新情報を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データセットの整備と解析に多くの時間を費やした。また、本テーマの関連論文の執筆・投稿を進めたため、使用額は予定額よりも少なかった。次年度は学会発表と論文発表を精力的に遂行する予定であり、主に旅費およびその他を使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
健康寿命の定義となるADL障害の発症や死亡の情報について、引き続き詳細に調査する。平成28年度も住民健診を実施し、生活習慣、臨床検査、生命予後の情報を収集する。住民健診では、医師や訓練されたスタッフによる問診や情報収集(脳・心血管病、悪性腫瘍を含めた生活習慣病の発症情報およびその他の疾患の既往歴、家族歴、飲酒・喫煙・運動・食習慣などの生活習慣の情報)、医師による診察、身体計測、血圧測定、心電図、胸部エックス線検査、呼吸機能検査、眼底検査、血液生化学検査、検尿、75g経口糖負荷試験を行う。前年度と同様に、住民健診の未受診者・転出者へのアンケート調査、久山町周辺の病院への定期的な訪問調査も実施し、情報を収集する。死亡例については、病理解剖の承諾を得るよう努力し死因を精査する。 統計解析をさらに詳細に検討する。得られた研究成果は、国内学会および国際学会での発表、英文誌への投稿を予定している。
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