研究課題/領域番号 |
26350897
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
加隈 哲也 大分大学, 医学部, 講師 (80343359)
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研究分担者 |
正木 孝幸 大分大学, 医学部, 助教 (00423715)
後藤 孔郎 大分大学, 医学部, 助教 (10457624)
柴田 洋孝 大分大学, 医学部, 教授 (20245484)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス / 糖代謝 / インスリン / グルカゴン / 高脂肪食負荷 / 高ショ糖負荷 / 加齢負荷 |
研究実績の概要 |
膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)の糖代謝についてさらに詳細な検討を行った。同時期に出生した11―13週齢の雄のTNFαTgマウスと野生型のC57BL6Jマウスで、しかも体重、随時血糖値がほぼ同一な8匹を使用して比較した。TNFαTgマウスではインスリン陽性細胞は形態的には障害されていたが、インスリンは有意に高値であった。一方で、グルカゴン陽性細胞やソマトスタチン陽性細胞は明らかに減少していたが、グルカゴンは低下していなかった。両マウスを24時間絶食にしたところ、血糖値は同程度に抑制され、インスリンはそれぞれ有意に低下、一方でグルカゴンには変化を認めなかった。以上の結果は、TNFαTgマウスではインスリン分泌制御機構、またグルカゴン分泌も保っていることを示している。一方で、野生型マウスには有意な低血糖を誘発できない0.5U/kgのインスリン投与でも、明らかに血糖が抑制されたことから、グルカゴン機能は障害されている可能性が考えられる。次に約1年間の飼育を行ったところ、野生型マウスは、体重は生後16週で30kgを超え、生後50週には40kgを超えるが、TNFαTgマウスは生後1年経っても体重は30kgにも満たなかった。また野生型マウスの血糖は生後16週で200mg/dlを超えたが、TNFαTgマウスは生後1年経っても血糖が200mg/dlを超えることはなかった。つまり野生型のC57BL6Jマウスは肥満糖尿病になりやすい性質があるが、TNFαTgマウスは加齢による肥満、糖尿病に抵抗性を示すことがわかった。さらに11―12週齢雄の両マウスに8週間の高脂肪食、高ショ糖食負荷を行ったところ、C57BL6Jは有意に体重が増加したのに対し、TNFαTgマウスでは全く変化が認められなかった。またTNFαTgマウスでは高脂肪食、高ショ糖食負荷による脂肪肝(病理学的steatosis)の程度も明らかに抑制されていた。このことはTNFαTgマウスが高脂肪食、高ショ糖食負荷に対しても抵抗性であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)の糖代謝に対し、より詳細な検討を行った。高脂肪食負荷、高ショ糖負荷に明らかに抵抗性を示すことが確認できた。また長期生育下でも肥満、糖尿病抵抗性を示していることがわかった。これまでの検討では、TNFαTgマウスのインスリン分泌ならびに感受性上昇は、機能的グルカゴンの低下が寄与している可能性があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究計画に則って研究を進める。一方で、ラットインスリンプロモーターを使用したトランスジェニックマウスであるため、TNFαの異所性、特に中枢性発現がないことを再度確かめているところである(免疫染色では視床下部を中心とした脳全体に、異所性発現はないようだが、さらにin situで確認予定)。糖代謝が良好であった原因として、機能的グルカゴンの低下が示唆されているが、再度IPGTT、IPITTでグルカゴン分泌を調べる必要があると思われた。
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次年度使用額が生じた理由 |
1、前年度未使用額が比較的大きく、本年度予算に余裕があった。2、中枢性摂食調節因子の遺伝子発現に関わる物品などについて、教室から他大学へ国内留学した大学院生が実施してくれたため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
、腸内細菌の研究も含めて、機能的グルカゴン抑制モデルとの比較も必要と考える
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