研究課題
膵β細胞特異的TNFα過剰発現マウス(TNFαTgマウス)は明らかなinsulitisを呈するにも関わらず、糖尿病発症に抵抗性を示すことから、自己免疫性1型糖尿病の発症メカニズムを解析する目的で本実験を始めた。ところがこれまでの3年間の研究で明らかになったことは、極めて意外なことであった。TNFαTgマウスはIPGTTでもIPITTでも血糖曲線は低く、インスリン感受性は良好であった。TNFαTgマウスではインスリン陽性細胞は形態的には障害されていたが、インスリンは有意に高値。一方で、グルカゴン陽性細胞やソマトスタチン陽性細胞は明らかに減少していたが、サンドイッチ法で確認した血中グルカゴン値は低下していなかった。野生型のC57BL6Jマウスは肥満糖尿病になりやすい性質があるが、TNFαTgマウスは生後1年経っても血糖が200mg/dlを超えることはなく、体重も有意に低く、TNFαTgマウスは加齢による肥満、糖尿病に対して抵抗性を示した。また高脂肪食、高ショ糖食負荷に対しても体重増加、血糖上昇を認めなかった。しかも、このような過栄養負荷に対して肝臓の脂肪蓄積をみとめるものの、脂肪肝の程度はC57BL6Jマウスより明らかに弱く、驚くべきことに肝臓重量は普通食摂取マウスより有意に低下していた。つまりTNFαTgマウスは肥満抵抗性、糖尿病抵抗性、脂肪肝抵抗性マウスであることを示している。また摂食調節に関わる中枢性神経ペプチドには変化はなかったが、AVPのみ有意に上昇しており、飲水量の違いのみならず、本マウスの表現型を説明する鍵となる可能性が示された。
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