研究課題/領域番号 |
26350901
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
大岩 美嗣 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (30322374)
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研究分担者 |
田中 寛人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (00364084)
有田 幹雄 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (40168018)
中西 一郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40364088)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Alzheimer's disease / MRI / tau / amyloid beta / morphometry |
研究実績の概要 |
研究の概要と現時点での研究結果を解説します。 (目的)アルツハイマー型認知症(AD)の発症に関しては、脳内の生化学的変化などその機序が徐々に明らかになりつつある。しかしながら高齢の認知症患者では、原疾患に加えて加齢による変化が合併して複雑な病態を呈していることが多く、認知症の進行を決定する因子にはさまざまな要因が考えられる。この研究は高齢AD患者の認知機能の推移といくつかのバイオマーカーとの関連を調査する観察研究である。この研究に登録された症例の初回認知機能評価と各種バイオマーカーとの関連を横断的に分析した結果を示す。 (方法)登録された症例(2016年4月時点)は総数115人(64~84歳)でADが76人、軽度認知障害(MCI)が24人、正常範囲と判定された者は15人であった。認知機能評価voxel-based specific regional analysis system for AD (VSRAD)を用いたMRI画像評価を全例に施行した。同意の得られた症例には腰椎穿刺により脳脊髄液中アミロイドベータ1-42 (Aβ42)、タウ蛋白 (T-tau)、リン酸化タウ (P-tau)を測定した。 結果:認知機能低下は加齢、VSRADのZ score(嗅内皮質の萎縮程度)、全大脳皮質の萎縮範囲、脳脊髄液T-tau、P-tauの上昇、Aβ42の低下との関連が有意であった。脳脊髄液バイオマーカーの上記変化は年齢との相関は認められなかった。Z scoreはT-tau/ Aβ42、および P-tau/ Aβ42比の増加と有意な相関があった。多変量解析ではP-tau/ Aβ42比がADの重症度に関連する独立した因子であった。 結論:高齢のAD患者においても、MRIで評価される嗅内皮質の萎縮、脳脊髄液P-tau上昇とAβ42低下が認知機能低下を決定する因子であることが本研究より示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象となる認知症高齢者の各種データ(高次脳機能評価、MRIによる脳の形態変化の定量、脳脊髄液中バイオマーカー)が順調に集まっている。多変量解析などの統計処理に対するバイアスの問題を解決するためには軽症および中等症のAD、MCI、正常高齢者のデータをまだ追加したほうがよいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
症例登録数を追加するとともに、まず初回検査データを整理して横断的評価結果を出す予定である。つぎに縦断的評価の結果をまとめて、研究主題であるADの進行に最も関与するバイオマーカー(MRI morphometry、髄液中蛋白、その他)を検索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1、脳脊髄液AD関連蛋白の検査症例数が予定より少なかった。 2、初回の結果分析がやや遅れ、平成28年度の学会発表に回ることとなった。 以上が予算使用額が予定額より下回った理由です。
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次年度使用額の使用計画 |
1、症例の登録期間を平成28年度末まで延長し追加検査を行う予定ですので、脳脊髄液検査に対する検査コストがなお発生する予定です。 2、研究の途中経過を平成28年度の各種学会(日本認知症学会、アメリカ合衆国のSociety for Neuroscience2016年総会など)に発表予定です。
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