研究課題/領域番号 |
26350903
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研究機関 | 群馬パース大学 |
研究代表者 |
佐藤 友香 群馬パース大学, 保健科学部, 助教 (60713336)
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研究分担者 |
小河原 はつ江 群馬パース大学, 保健科学部, 教授 (60134293)
浅見 知市郎 群馬パース大学, 保健科学部, 教授 (60320652)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 加齢・老化 |
研究実績の概要 |
末梢血中のT細胞は人体の免疫機能を担う重要な細胞である。しかし、T細胞の分化成熟を行う胸腺は青年期をピークに加齢と共に退縮していくため、60歳には最大時の40%ほどの大きさまで退縮するとされている。現在、一般的に使用されている末梢血免疫細胞の検査基準値は青壮年期の成人を対象とするものであり、健常高齢者の基準値は定められていない。 そこで、本研究では同意の得られた65歳未満の健常者、65歳以上の高齢者(在宅高齢者、老人ホーム居住在宅高齢者)を対象に、①高齢者の生活環境の差異が、末梢血免疫能に及ぼす検討する、②65歳未満の健常者を青壮年期(44歳以下)、中年期(45~64歳)にわけ、更に65歳以上の健康高齢者を前期高齢期(65~74歳)と後期高齢者(75歳以上)にわけて検討し、加齢に伴う免疫能の変化を調査する、③健常高齢者の末梢血リンパ球サブセットの基準値の確立を目指す、以上3つの項目について検討を行うこととした。実施項目は、被験者の健康状態を把握するための生活習慣調査、生化学検査(AST、ALT、γ‐GT、HDL-C、LDL-C、中性脂肪、HbA1c)、血圧測定、及び血球算定(赤血球数、Hb、Ht、白血球数、白血球分画)を行う。それに加え、高齢者の末梢血免疫能の指標としてリンパ球サブセット(CD4/CD8比)、CD4リンパ球サブセット(Th1/Th2比、制御性T細胞(Treg))測定を実施する。 平成26年度研究計画では、群馬パース大学倫理審査委員会の承認を得た後65歳未満の健常者と老人ホーム居住高齢者を対象に検討を行う予定であったが、倫理審査の承認や、フローサイトメータの設定に時間がかかり研究開始が遅れ、ようやく学内にて65歳未満の健常者を募り生活習慣調査、血圧測定、生化学検査、血球算定、リンパ球サブセット測定、CD4+リンパ球サブセット測定をスタートしたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度研究計画では、65歳未満の健常者と老人ホームの居住高齢者を対象に研究を進める予定であったが、現在の状況は、群馬パース大学倫理審査委員会の承認を得て学内で健常者を募り測定を始めたところである。 生活習慣調査票は食生活、睡眠時間などの質問に回答するオリジナルの質問票と、健康度、食事、運動、休養を数値化する「健康度・生活習慣診断調査(DIHAL.2)」(TOYO PHYSICAL)の2つを用いることとした。 リンパ球サブセットのうちTh1/Th2比の測定法は、細胞内サイトカイン染色を用いる培養法が一般的に用いられているが、費用や時間を大きく費やすため、今回は細胞表面のケモカインレセプター(CCR)を用いたCCR法による測定を試みた。予備実験では、Th1細胞をCCR5抗体、Th2細胞をCCR3抗体にて染色し、測定したがTh2細胞比率の数値が培養法に比し高値となった。以上のことから、CCR3抗体はTh2以外の細胞にも結合している可能性が考えられたため、CCR3抗体からCCR7抗体に変更し再度検討を行った。CCR7抗体の反応時間を30分と1時間の2つに分け測定した。30分の反応時間ではTh2細胞比率が2.64%だったのに対し、1時間の反応時間では5.13%と高値を示した。これは、CCR7はナイーブT細胞やNK細胞にも発現しているためTh2細胞以外の細胞にも結合している可能性が考えられた。度重なる検討を行ったが、CCR3抗体、CCR7抗体ではTh2細胞を特異的に検出することは困難であると判断したため、培養法にて測定を行うこととした。Treg細胞の測定時に使用する抗体の濃度、反応時間の検討を行い測定方法の確立を行った。 現在、学内の健常者の測定を始めたところであるため、今後地域高齢者や関連病院の健診受診者を対象に測定を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
測定方法の確立は終了したため、従来から予定していた関連病院にて、健診受診者の検体採取を開始し解析を進めていく。また、関連病院健診受診者だけでなく新たな対象者を追加していくための計画を現在推進しているところである。総合型地域スポーツクラブ(NPO法人)と連携し、スポーツクラブに通う65歳未満の健常者、健常高齢者を対象とした検体採取を行っていく予定である。スポーツクラブの加入者は500人を超え、それぞれの加入者が卓球クラブやダンスグループなどのグループに所属しているため、それぞれのグループに呼びかけを行って研究協力者を募ることにより、一度に多くの被験者を集めることが可能になると考える。当初の計画より対象範囲を広げ、研究の遅れを取り戻していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在は予備実験が終了し、実際に測定を開始したところであるため交付金は全額使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は多くの検体の測定を行うため、平成26年度の繰越と合算し抗体の購入等に使用していきたいと考える。
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