統合医療には、プラクティス系とプロダクト系に大きく分類できる。本研究は、統合医療として両方を視野に入れ、成人において問題になっている生活習慣病を主対象とし、カテゴリー化された各種の療法のランダム化比較試験(RCT)のシステマティック・レビュー(SR)のオーバービューを行うことをねらいとした。さらに未病ではあるが、健康増進のための積極的な介入としてプロダクト系の中に「いわゆる健康食品」があり、それらの多くは生活習慣病に関与することを間接的に標榜している。さらにその中でも2015年から開始された機能性表示食品の根拠として届出られた各種のSRの質評価も行い、適正なSRになっているかを明らかにした。 一連の成果としては次の通りである。先進諸国で生活習慣病対策や腰痛予防対策で人気の高いピラティスの治療効果に関するRCTのSRのSRを実施し、有害事象が十分に報告されていないという問題点もあるが、慢性腰痛を有する患者の疼痛軽減と機能の改善に有効であることを公表した。一方、生活習慣病については十分なエビデンスが得られなかったことを明らかにした。統合医療のための研究方法論の課題点として、「RCT報告のためのガイドライン:とくに薬剤以外を対象とする場合の考え方」をまとめて公表した。機能性表示食品制度の中で届出られたSRは、SRの研究方法の質を評価するツールで分析した結果、必要不可欠とされる項目で記入漏れや不履行が多く、エビデンスを示すのに適切ではないSRがあることを公表した。これは、生活習慣病や健康増進のための根拠の示し方を正しく伝えることをより強調することをアカデミアや社会に伝える基礎資料となった。生活習慣病のSRをオーバービューした結果として、81編のSRが存在し、プラクティス系よりもプロダクト系が多く、またSRの重複も多いことが明らかになった。
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