本研究では、高齢者(61-80歳)を対象に末梢血液中の樹状細胞(Dendritic Cell: DC)を自然免疫の指標として身体組成(身長・体重・体脂肪量・筋肉量・タンパク質量)、身体活動量(総消費量、運動量、歩数、歩幅、活動時間)との関係を調べた。 その結果、骨髄系DC(pDC)と筋肉量・タンパク質量・総消費量とにそれぞれ有意な相関がみられた。また、骨髄系DCにおけるToll様レセプタ4の発現(pDC/TLR4)と筋肉量・タンパク質量・総消費量にもそれぞれ有意な相関がみられた。 これまでの先行研究では、歩数を指標とした有酸素運動が免疫機能を高めることが報告されてきた。しかし、本研究結果から、pDCならびにpDC/TLR4と筋肉量・タンパク質量・総消費量とにそれぞれ有意な相関がみられた。このことは、筋肉量の増大が自然免疫の主体であるpDCならびにpDC/TLR4を高める可能性が示唆された。筋肉量の増大にはレジスタンス運動による運動様式が主体となるため、血圧の高まりや重量物使用によるリスクから高齢者の運動としては避けられてきた背景がある。しかし、近年では、ゴムを用いたチューブトレーニングや軽重量トレーニング、下半身を中心としたトレーニングなどで過度な血圧の高まりを抑える取り組みが行われている。 今後は、低負荷のレジスタンス運動を組み込んだトレーニング介入とpDCならびにpDC/TLR4との関係を調べることが必要である。
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