研究実績の概要 |
本研究の目的は生死を分けるリスクファクターの見極めと,それの加齢による変化をあきらかにすることである.リスクファクターとして血管内の酸化ストレスマーカーである血漿コエンザイムQ10の酸化型の割合(%CoQ10)と細胞組織の酸化傷害マーカーである遊離脂肪酸量(FFA),遊離脂肪酸中のパルミトレイン酸やオレイン酸の割合(それぞれ%16:1と%18:1)に注目している.死に直面している疾患として筋萎縮性側索硬化症(ALS)がある.ALS患者に対しフリーラジカル消去薬エダラボンを投与しその効果を吉野英医師と共同で検証した.投与により6ヶ月間病状の進行が抑制された患者は13人中6人で,非投与では19人中0人なので明らかに投与効果が認められた.%CoQ10は健常人よりも優位に高いが,FFA量,%16:1,%18:1は大差なかった.%CoQ10の低下は認められなかったが,経過良好群では一過性のFFA量,%16:1,%18:1の上昇は抑制された.さらに注目すべきは血漿尿酸レベルである.健常人よりも有意に低いばかりでなく,エダラボン投与でそのレベルは顕著に上昇した.エダラボン非投与では尿酸レベルが経時的に低下していくこと,エダラボン投与で脳脊髄液中の3-ニトロチロシンが減少するとの報告から,ALSのエダラボン投与効果はエダラボンがペルオキシナイトライトを消去することと推定した(Nagase M, Yamamoto Y, Miyazaki Y, Yoshino H, Redox Report, in press).さらにエダラボンが尿酸よりも30倍速くペルオキシナイトライトと反応し,非ラジカル生成物である4-ニトロソエダラボンを与えることを明らかにした(Fujisawa A, Yamamoto Y, Redox Report, in press).ALS治療に対してエダラボンが2015年認可承認されたことは喜ばしい.
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