研究実績の概要 |
糖尿病合併症など糖化ストレス関連疾患の発症には蛋白糖化最終生成物質AGEs (advanced glycation endproducts)及びRAGE (receptor for AGEs) が関与し、また睡眠不足は皮膚におけるAGEs蓄積を増大することが示されている。H27年度目標として、糖化ストレスと睡眠を結ぶ要因として睡眠関連ホルモンであるメラトニンに着目、そのAGEs生成抑制作用、AGEs分解促進作用、AGEs/RAGEシグナル抑制作用について検討した。 結果として、in vitro ヒト血清アルブミン/グルコース反応系ではメラトニンはAGEs生成を抑制せず(Moniruzzamanら: Glycative Stress Research 3: 1-4, 2016)、培養マクロファージ反応系ではメラトニンはAGEs/RAGE刺激起因性TNFα産生を抑制しなかった(Mamun Or Rashidら: Glycative Stress Research 3: 2016, in press)。メラトニンのAGEs架橋切断率(15%)は陽性対照N-phenacylthiazolium bromide (PTB: 0.4 mmol/L)のAGEs架橋切断率(6%)より高いこと(Takabe ら: Glycative Stress Research 3: 38-43, 2016)が示され、メラトニンがAGEs分解促進活性を有することが示された。 睡眠不足により皮膚AGEs蓄積量が増加する原因として、一部にメラトニンが関与すること、作用機構としてメラトニンによるAGEs架橋切断作用が示された。糖化ストレスによる合併症を予防するためには、睡眠不足を避け、睡眠の質を高く保ち、自分自身のメラトニン分泌を促すことの意義が確認された。
|