研究課題/領域番号 |
26350920
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研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
田久保 憲行 一般財団法人脳神経疾患研究所, 臨床研究部門, 小児科科長 (20306583)
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研究分担者 |
大津 成之 北里大学, 医学部, 助教 (60286341) [辞退]
橘田 一輝 北里大学, 医学部, 助教 (60406957)
田久保 由美子 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (20385470)
横山 美佐子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70439149)
加藤 チイ 実践女子大学, 生活科学部, 准教授 (40461785)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児肥満症 / 個別介入プログラム / 血管内皮機能 / 医療チームアプローチ / 生活環境病 |
研究実績の概要 |
A大学病院小児科外来に通院、もしくはB市肥満検診において専門医の治療が必要と判断された6歳~12歳の中等度~高度肥満の児(肥満児)を対象に、小児肥満における血管内皮機能をはじめとした動脈硬化性変化を捉える検討ならびに、肥満解消のための有効な介入プログラム開発を目的として実践的な介入研究を実施した。いずれもヘルシンキ宣言に則り研究内容を口頭で説明し、文書で同意を得た。方法は、集団教室と外来診療を合わせた調査・介入研究とし、集団教室は長期休み中の1 日のプログラムと2 週間毎の週末に行う90 分プログラムで構成した。①1日集団教室:身体計測(身長、体重、血圧、腹囲、体脂肪率)、身体特性(血管内皮機能、運動負荷試験、運動機能)、質問紙および聞き取り調査(家族構成、生活習慣、肥満に対する親子の認識、治療に対する認識)、医師・看護師・栄養士から集団講義(40 分間を2 回)、理学療法士による1 時間の遊戯性のある運動、ライフコーダで介入前後の活動量の測定、安静時エネルギー消費量(REE)の測定を実施。②2 週間毎90 分プログラム:身体計測、理学療法士による1 時間の運動または、栄養士による調理実習、看護師による個別、集団教育を実施。③外来:通常の診療(身体計測、採血(肝機能、脂質代謝等)、診察)に加え、個別栄養相談を実施。なおこれら介入は、集団教室等で得られた基礎データをもとに、各子どもとその家族について事例検討を研究者全員で実施し、個々に重点的介入視点を抽出した上で、個人に合わせた2 週間毎プログラムを作成し実施。介入期間は1 年を基本とし、肥満度+30%以下で、かつ生化学データ等正常化した時点で終了とした。現在までに延べ15名参加し4名の中途脱落があったが継続的に参加する者が多く、前回の科研費による検討から肥満度が低下し、すでに2名がプログラム終了となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮機能測定については、長期休み中の集団教室で測定し、介入による推移の変化を経過観察できている。 Endo-PATによる血管内皮機能測定のF-RHI値やRHI値は、小児での基準値がなくその判定が困難である。昨年までボランティアで募った健常小児のデータを対照群とし、成人で用いられているRHI値よりも、F-RHI値の方がより小児では適している可能性を関連学会で報告した。 介入プログラム開発に関しては、週末に実施する90分プログラムと、長期休暇期間を利用した1日プログラムは計画通り実施できている。本プログラムに参加希望する対象者も増えてきており、B市の肥満検診事業から紹介される参加者も増えてきている。少しずつ本プログラムと行政との連携を検討しているところである。 介入プログラムにおいて、運動面では主に理学療法士が関わり、小児肥満のバランス特性や筋力の特性を検討し、その特性に合わせた運動メニューを考案し実践している。また遊戯性があり、楽しみながら身体を動かせるよう工夫している。栄養面では、管理栄養士が関わり、野菜摂取を増やす試みや、親と一緒に調理をしつつ食育につなげる検討などを実践している。家族看護の視点からは、肥満のこどもを取り巻く家族や社会環境に重点を置き、肥満を助長している家族や社会的背景の問題点や課題を明らかとし、個別的な対応が可能であるか、またその解決策として有効な事項等を検討している。本介入プログラムで医療チームを形成し、協働する体制が確立されている。また各々の専門性を活かした活動ができており、専門的な観点からの検討がなされ関連学会で報告した。 本介入プログラムのもうひとつの特徴として、ムーブメント療法・教育を取り入れて検討している点が挙げられる。和光大学の協力を得て実践し、自己効力感を高める効果と肥満解消につながる可能性につき検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き介入研究を継続してゆき、対象者を増やしつつ各種データの解析をおこなってゆく予定である。今後の研究を遂行する上での課題は主に2点ある。 1つは血管内皮機能測定のデータ解析につき、ボランティアの健常小児のデータをもとに比較検討してきたが、対照群の年齢や性別にばらつきがあり、かつ対象者数も少ないため交絡因子となっていた可能性が否めない。 そこで本年はC県の小中学校の協力を得て、対象者数を増やして健常小児の血管内皮機能の測定を予定している。年齢層を6-9歳、10-12歳、13-15歳の3層程度に区分し、男女の数や体格など調整して測定し、対照群としてのデータ解析を行う予定である。 もう1つは、本介入プログラムの評価を定期的に行ってゆく必要性があることである。現在まで本介入プログラムに参加している対象者のうち、肥満度が不変、もしくは増悪傾向にある者がいる。こうした肥満度が改善しない対象者の問題点と課題を明らかとし、常にプログラム内容の評価ならびに、その効果について検証してゆく必要性がある。我々は検証方法のひとつに、Soft System Methodology(SSM)の考え方を導入し、混沌とした状況の中から課題を抽出し、問題点を可視化する試みを行いつつ検証してきた。介入プログラムをただ漠然と実施するのみならず、プログラムの検証を行うことは重要であり、検証の方法としてSSMの有用性も検討してゆき学会等で報告してゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた血管内皮機能検査装置Endo-PAT2000の購入を見合わせ、レンタルリースとして使用を検討したため未使用金が生じた。また、各分担研究者の研究の進捗状況により未使用金が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
健常小児の血管内皮機能の測定値を収集するため、研究代表者や分担研究者、研究協力者のC県への旅費、滞在費用や、機器のレンタルリース料、文具等の物品費用、測定参加者への謝礼等に使用する計画である。また小児肥満介入プログラムにつき、海外での実践の様子を視察する計画も検討している。 分担研究者の未使用金等は、今後各専門分野ごとに必要物品があるため購入を予定している。(データマイニングなど解析ソフトなど購入を予定)
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備考 |
現在、本プログラムを紹介するホームページを作成中である。
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