本研究課題では、インスリン抵抗性の指標となる血中バイオマーカーの開発を目指し、細胞・動物モデルを用いてインスリン抵抗性を反映する分泌タンパクの探索を行った。 飽和脂肪酸の一種であるパルミチン酸を処理したC2C12筋芽細胞のRNA-Seq解析を行った結果、パルミチン酸処理したC2C12細胞では、341種類の遺伝子の発現が増加していた。それらの中には、分泌タンパクをコードしている遺伝子が38種類存在した。発現変化が大きい上位20遺伝子の多くは、インスリン抵抗性や糖尿病との関係が報告されており、モデルとしての有用性も確認された。 高脂肪食摂取マウスの骨格筋を採取し、Growth differentiation factor 15 (Gdf15)、Stanniocalcin 2 (Stc2)、Inhibin beta-A (Inhba)、Angiopoietin-like 4 (Angptl4)の遺伝子発現を調べた結果、通常食群と比較して高脂肪食群では、ヒラメ筋においてInhbaの発現が増加し、Gdf15の発現に増加傾向が認められた。また、長指伸筋においてStc2の発現に増加傾向が認められた。 肥満モデル動物である高脂肪食摂取マウス、ob/obマウス、db/dbマウス、Zuckerラットの血液を採取し、血中のChemokine (C-C motif) ligand 7 (Ccl7)、ISG15 ubiquitin-like modifier (Isg15)を測定した。その結果、ob/obマウスにおいて血中Isg15濃度が減少し、Zuckerラットにおいて血中Ccl7が増加していた。 以上の結果から、血中Ccl7がインスリン抵抗性のバイオマーカーになる可能性が考えられた。今後、動物モデルを用いてより詳細にマーカーとしての有用性を検証する。
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