研究課題/領域番号 |
26350929
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小林 勝年 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30326623)
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研究分担者 |
高橋 千枝 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00412916)
田中 大介 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (20547947)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | いじめ / 発達論的アプロ-チ / 攻撃本能 / 同調圧力 / スケープゴート / 被害者特性 / 加害者特性 / 仲間関係 |
研究実績の概要 |
まず、生物学・教育学・社会学・心理学等の分野で扱われてきた我が国の「いじめ」研究の総括と課題、そしていじめを捉える基本的視座による類型化作業を行った。生物学はLorenzに代表されるように攻撃本能との関連を指摘するが「類的存在」としての特徴も併せ持つ人間においては利他性や共同性の獲得に伴ってそれが抑制されるのかそれとも質的な変化を遂げていくのか-発達的課題として残る。次に、教育学は画一教育や競争教育など現代学校教育の歪みとして現象化していると説明し同調圧力に影響されやすい子どもや未熟な仲裁集団等の頻出要因について分析するが、その対応策としては学校解体論から集団づくりまでまちまちで教育実践への接近に乏しい。社会学は文字通りいじめの発生・発展・終結のプロセスを地位やリ-ダ-などを含めた集団の質や構成メンバ-等との関連よりグル-プダイナミックスとして解説するがスケープゴート論など低次な集団凝集力に支えられた問題事象として扱う。最後に、心理学は加害者・被害者になりやすい特性について関心を持ちながらもPTSDなどいじめ被害への救済法と共に予防教育としてアサ-ショントレ-ニングや構成的グル-プエンカウタ-などの心理教育の効果検証に向かう。このように各々の学問的関心や方法論によって導かれていく結論は異なっていくが、いじめを捉える基本的視座として、個人か集団か、予防か対処か、子ども集団の変化力か教師の学級経営力か、子ども集団において不可避的事象なのか回避可能な事象なのかという判断は決定的でありそれがいじめ対応の混迷を誘っているとも言えよう。逆に「対処か予防か」という単純な二分法を超え「友達関係における修復力」の乏しさ・民主的集団形成の課題として包括的・発達論的に扱っていく本研究の意義が改めて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いじめ相談は受けてきたが相談事例より本人の性格等のデ-タをとることが困難であった。本人あるいは保護者からすればアドバイスを求めることが主であり「いじめ研究」への協力までの精神的余裕は残されていない。よって当初計画していたように相談事例よりいじめ被害者の精神的特性を導いたり心理的モデルを作成していくことは困難と判断された。
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今後の研究の推進方策 |
いじめ相談の事例よりいじめ被害者の心理的モデルを描くことは困難と判断された。よって今後はピア関係の質的な転換期において特徴的ないじめを抽出していく調査に力を注ぐこととする。幸い今年度より鳥取県「地域と共に創るとつとり人権教育事業」モデル校として鳥取市立西中学校が採択され筆者が共同研究者に任命されたことから年間2回実施予定の「いじめ」リスク調査とQUの調査結果との相関を調べ個人特性と集団の凝集性について検証していくことが可能となった。その結果より韓国・ロシアの学校にも調査を開始し学校をめぐる文化性や家庭環境についても比較・検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
いじめやピア関係に関する質問紙調査の項目が定まらず予備調査にまで至っていないのでその間の研究経費が含まれている。 当初予定していた心理検査の購入を控えていた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた心理検査を購入する予定である。 また今年度はできれば韓国あるいはロシアの学校で同様な質問紙調査を実施する予定であることから質問紙の調査項目を速やかに設定し国内での予備調査を終了するための必要経費として使用する。
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