研究課題/領域番号 |
26350930
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今川 真治 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00211756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 親子関係 / 愛情表出 / 抱きしめ / コミュニケーション / 子どもの社会性 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究全体における準備的段階として,まず,国内外における親子の愛情交換に関する行動学的研究の文献検討を実施した。その結果,親の保育・教育方針等に関わる先行研究は散見される一方で,本研究に直接関連するような親子の愛情交換に関する先行研究はほとんど存在しないことが,改めて明らかとなった。 次に,研究協力幼稚園において,日常的な保育と教育の実態と保護者が参加する種々の行事を調査し,行事時の親子関係に関する行動観察の可能性について検討するとともに,アンケート調査の実施要領,時期等について,関係幼稚園と詳細な検討を行った。 本年度は,親子関係に関わる予備的研究として,家庭における家族間コミュニケーションの量や質と,幼稚園の集団保育場面における,男児の攻撃性を中心とした社会的行動との間に関連があるかに関する対照研究,および,家庭における保護者の子どもに対する「ほめ」が,子どもの集団保育場面における他者との関係(他者をほめる,他者からほめられる等)にどのように関係するかに関する研究を実施した。 その結果,保護者と子どもの間のコミュニケーションが豊富である家庭の男児は,他児との親和的な関わりが多い一方で,他児に対する身体的な攻撃行動が少ないことが明らかとなった。他方,親子間のコミュニケーションが少ない家庭の男児に,他児に対する身体的な攻撃行動が多く認められ,親子間のコミュニケーションを通じた情愛的な交流の多さが,幼児の感情安定性に関連している可能性が示唆された。 また,幼児の年齢や性別によって,保護者のほめる程度やほめ方に違いがあることも明らかとなり,4歳児の保護者は「頭をなでる」,「抱きしめる」などの身体接触を伴うほめを多く示す一方で,5歳児の保護者には身体接触が少なく,「拍手する」などの身体接触を伴わないほめを多く使うことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力幼稚園,1園との連携については,おおむね予定通りの合意と協力の態勢が整ったが,全体計画の中では,複数の幼稚園および保育所でも研究を実施する予定となっており,それらの施設の承諾と合意が十分に整ったとは言えず,現在も交渉中である。 親子間の愛情交換に関する行動学的研究の手法について,おおむね方針が決定し,使用するビデオカメラ等の準備も整った。一方,保護者に対するアンケート調査の準備が現在進行中であり,調査項目等の最終決定がまだできていないが,近々には完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね,当初の研究計画通り進行中であるため,予定通りの研究の推進を図る予定である。 その一方で,複数の対象施設における研究遂行を円滑に行うため,研究分担者1名を加えることにし,研究の進行をより確実なものとすることとした。 さらに,海外における調査,あるいはアンケートの実施も視野に入れており,その必然性について現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初研究計画の円滑な遂行のために,研究分担者1名を参加させることが必要と考えるに至ったため,研究分担金として配分する金額の一部を,次年度繰り越しすることにした。 また,当初研究計画にはなかった,海外での調査が必要になる可能性が生じたことにより,海外調査分旅費を捻出しておく必要を考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度より追加した研究分担者に,応分を配分するとともに,当初計画になかった海外(アメリカ)でのアンケート調査を実施する予定である。
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