研究課題/領域番号 |
26350933
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
野中 壽子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (10164716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 保育所 / 園庭環境 / 身体活動量 / 運動能力 / 縦断的調査 |
研究実績の概要 |
今年度は,H26年度及びH27年度の調査に引き続き,身体活動量,活動内容,運動能力測定を実施し,3歳後半から5歳後半までの2年間の経年変化を検討した。対象はN市公立保育所の中で,園庭が広い園(1,300㎡以上)と,狭いB園(500㎡未満)の5歳児クラスの42名で,H26年度,H27年度と同様に3種類の調査(①身体活動量:ライフコーダによる保育時間中の活動量と活動強度を10日間調査 ②活動内容調査:幼児の活動内容を観察者が記録 ③運動能力:立幅跳び,両足跳び越し,跳び越しくぐりの3種目の測定 を実施した。3歳後半,4歳後半,5歳後半の縦断的結果を両園で比較したところ,5歳後半の午前中の活動中における1時間あたりの平均歩数は,A園1,571±813歩/時,B園1,362±513歩/時で,A園が有意に多く (P<0.01)3期を通してその傾向は変わらなかった。調査対象とした2園は同一市内の公立保育所であり,調査期間中のスケジュール,行事は両園でほとんど同じであったことから,恒常的な活動量の差は園庭環境の差異によって生じていると考えられた。活動内容をみると,A園では園庭で大人数でのドッジボールや鬼遊びなど多様な動きが含まれる活動がみられたが,B園では単発的な追いかけっこや少ない人数でのボール遊びにとどまっていた。しかし,運動能力に有意差がみられたのは3期を通して両足跳びこしのみであった。活動量や活動内容の差が運動能力に顕著な差をもたらさなかったことは,本研究の仮説と異なり,分析の方法等を変更していく必要が生じた。一方で,幼児期の身体発達には,狭くても園庭を有して日常的に外遊びを行っていることが重要であることが示唆されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度で調査は終了し,今年度は3歳後半から4歳後半まで半年ごと3期の身体活動量・運動能力調査結果をもとに,各要因の因果関係を分析することを中心とする予定であった。さらに研究成果の公表及び報告書の作成等により保育現場への還元を行っていく予定であったが,前年度調査が終わった時点で対象2園の運動能力に顕著な差がみられず,予測と異なった結果となった。このことから3歳後半から4歳後半の1年間では,園庭環境の差異による活動量の差が運動能力へ影響を及ぼすには至らなかったことが示唆され,調査を延長して経過をみる必要性が生じた。調査園の協力が得られ,今年度も活動量・運動能力調査を実施し,3歳後半,4歳後半,5歳後半と小学校入学間近までの2年間の発達過程を追うことができた。しかし,2年間の縦断的調査でも園庭環境の差異による運動能力への顕著な影響を見出すことはできなかった。このため,研究期間を延長して当初予定とは少し異なる分析の方向性を考えていくこととした。調査期間を延長しても傾向は変わらなかったことは予想外の結果であったが,調査園に再度の調査に協力いただいたことからおおむね順調であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向としては,運動能力に影響を及ぼすと思われる要因を活動量と活動強度だけでなく,遊びに含まれる動きの種類の観点を加え,a.動きの種類 b.身体活動量(歩数) c.身体活動強度 と運動能力との因果関係について検討していく。特に,園庭での外遊びと園外での外遊びを両園で比較検討していくことを中心に分析していく。 この結果に基づき保育の環境と活動内容,運動能力への影響に関する報告書を作成し,保育現場へフィードバックしていく。また,今回の調査をベースに全国規模の調査を検討するために,報告書のダイジェスト版を作成して研究機関に配布及び質問紙調査を実施し,今後の研究につなげる基礎資料を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度までで調査を終え,H28年度は分析と結果の公表に充てる予定であったが,調査を再度行ったため補助事業期間の延長申請をして承認された。これにより,H28 年度に執行予定であった報告書の作成や各機関への配布に費用が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
○動きの種類の同定,各要因の因果関係の分析: VTR分析及び統計処理にかかる謝金 ○研究成果の公表,保育現場への還元:報告書及びダイジェスト版の作成,郵送費,旅費
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