保育所における幼児の身体活動量・活動強度は園庭の狭い園と広い園で違いがみられたが、運動能力の差には顕著には表れないという、予測とは異なった結果となった。幼児の身体発達に影響を及ぼす要因は様々存在し、園庭の広さという物理的環境以外の要因の影響が大きいと考えられる。 しかし、園庭の狭い園では3歳後半の歩数と4歳後半の立ち幅跳び、4歳後半の歩数と5歳後半の立ち幅跳び、4歳後半の歩数と5歳後半の両足跳び越しに交差的相関がみられ、身体活動量が運動能力を高めることが示唆された。一方、園庭の広い園では3歳後半の歩数と4歳後半の跳び越しくぐりにのみ交差的相関が認められた。園庭の広い園では、3歳児における活動量の個人間変動が大きく、運動能力に影響を及ぼすと考えられたが、逆に園庭が狭く活動量の個人間変動の少なかった園において因果関係がみられた。これは、運動能力に影響を与える活動量の閾値のようなものが存在し、園庭が広い場合は、その園での活動量が相対的に低くても、閾値は超えているが、園庭が狭く全体的に活動量が少ないと、その閾値を超えられない場合もあり、活動量との因果関係が顕著になったものと考えられる。 一方で、調査を行った11月中旬は大きな行事は少ない月であったが、両園ともに園外に出かけたのは2週間のうち、1日か、最大で3日であり、特に5歳 (年長クラス)の11月は、両園ともに卒園に向けて製作や劇遊びなどさまざまな活動に取組む時期で、園外に行く機会は減少した。このことは、特に園庭が狭く園外に行って運動習慣を形成する必要がある場合は、4歳児(年中クラス)までに形成すべきことであると示唆された。 保育活動は、幼児の主体的な活動が確保されるよう環境設定を行うことが求められるため、保育者が子どもの状況に合わせて、設定を変えることが可能である園庭は重要で、散歩で代替できるものではない、との結論に至った。
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