研究課題/領域番号 |
26350939
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
吉岡 尚美 東海大学, 体育学部, 准教授 (60372950)
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研究分担者 |
内田 匡輔 東海大学, 体育学部, 准教授 (00407983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達障害 / 発達性協調運動障害 / 居場所 / スポーツ指導 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害児のスポーツ指導における具体的な事例と対応、ならびに指導方法を集成することを目的としている。平成27年度は、26年度に実施した調査結果にもとづき、主に二つの調査と実践活動を進めた。一つ目は、自閉症および軽度知的障害のある女性1名を対象に、居場所の心理的機能を測定する尺度を用いて、対象者が居場所と感じる場所について調査を行うとともに、情動知能測定尺度を用いた情動知能の調査を行った。結果、居場所の心理的機能を測定する尺度では自宅とスポーツ教室に有意差はみられず、スポーツ教室には受け入れてくれる他者が存在し、そこでの自分に自信が持てていることが明らかになった。 二つ目は、発達障害児者を対象としたスポーツ教室に参加している7名の参加者を対象に、運動能力テストを4回実施し、1年間の変化を視覚化することでスポーツ教室の活動が運動能力に与える影響を調査した。結果、長座体前屈に一部変化が確認できたものの、その他の運動能力には変化が見られず、月3回程度の頻度で1年間活動を継続しても運動に不器用さがある参加者の運動能力の改善に影響を及ぼさないことが明らかになった。しかし、毎回の参加記録と観察、保護者の聞き取りから、運動能力以外に変化があることが明らかになっており、発達障害児者を対象としたスポーツ教室の意義を、継続的且つ積極的な参加が与える変化として、運動能力だけでなく、生活機能全体で考察していく必要性が明らかになった。 上記の調査と並行して、対象者の特徴に合わせた具体的な指導方法の事例として、ティーボールのルールや方法を工夫し、参加者の取り組みの変化や技能の変化を1年間観察した。その結果、バッティングフォームの変化、ルールや守備の理解、ゲームへの意欲、仲間とのコミュニケーションに変化が見られ、多様な障害のある参加者がみんなで楽しめる活動として定着した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、26年度に実施できなかった運動能力に関するアセスメントが実施でき、その結果からスポーツ教室の活動が参加者に与える影響について示唆を得ることができた。また、26年度の調査結果から得られた課題(スポーツ教室が対象者に与える心理的・社会的影響)を明らかにする調査も実施できた。 さらに、活動の工夫や指導の事例についても並行して実践し、個々のケースに合わせた工夫や指導方法が、各対象者の活動時の行動や言動、パフォーマンスにどのようにつながるのかを明確化するための記録を蓄積し、一部の事例を学会で成果発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主に次の調査を進める。 ①知的障害と肢体不自由がある対象者のバランス力を向上するためのホームエクササイズに関するケーススタディー。 ②タブレット教材を用いた指導が自閉症スペクトラム障害がある対象者の動きにもたらす影響 ③精神遅滞と心臓病がある対象者の保護者へのインタビュー調査による、スポーツ教室がもたらす子どもと保護者の日常生活の変化 ④二次元尺度を用いた自閉症と軽度知的障害のある対象者の運動前後の気分の変化(平成27年度からの継続調査)。 また、平成28年度は最終年度であることから、報告書の作成準備を進めるとともに、成果を発表していく。報告書は2部に分け、第1部には、これまでの成果発表、平成28年度に予定している成果発表(日本体育学会、日本特殊教育学会、アジア障害社会学会での学会発表と学術雑誌への論文投稿)、その他29年度以降に成果を発表する予定の調査結果について論文形式でまとめる。第2部には、スポーツ指導のケースを、活動別、特徴別にまとめていく。活動の工夫や指導の実践は継続して行い、事例として報告書の第2部に記載できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際論文を2編投稿する予定であったが、1編となったため、投稿費ならびに英文校正費が予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は学会での成果発表を3題(3つの学会)予定しているため、学会参加費ならびに出張費に充てる。
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