研究実績の概要 |
舌喉頭偏位症(ADEL)児の泣き声は濁った不快な泣き声のことが多く、育児ストレスを増大させていると考えられている。オトガイ舌筋を一部切除する舌喉頭矯正術(CGL)により上気道の抵抗が減少し呼吸が改善することにより、泣く頻度と不快な泣き声が減少する。 舌喉頭偏位症(ADEL)と診断された乳児を対象に、CGL前後の啼泣音声を、高感度音声集音装置を用いて録音した。録音した音声ファイルから音声編集ソフト(SoundEngine Free)を用いて、ノイズの少ない啼泣音声を切り出した。啼泣音声の分析には感性制御技術(Sensibility Technology:ST)を用いて5つの特徴量を導出し、術前後での比較・検討を行った。STでは発話単位ごとに5種類の感情指標(C, A, J, S, E)を算出した。これらの指標は声の微妙な音色の違いを検出するもので、CGL前後の啼泣音声の音色の変化を測定するための尺度として考え、解析を行った。その結果、術前後の5つの特徴量の平均値は、指標S:1.67±0.50から2.04±0.80(p<0.05)、指標E:7.83±0.61から7.36±0.61(p<0.01)に有意差が認められ、喉頭の偏位による啼泣音声の変化が示唆された。ADEL簡易診断システムを開発していく上で、指標SとEが有効であると考えられた。
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