研究課題
Variability Ratio(VR)は心周期と心筋再分極の変動比率(SDQT/SDRR)を用いて、成人では催不整脈性の評価や性ホルモンの影響による心電図の性差を判読する指標である。我々はこれまでに健常児童の生後発育の中で、VRは心臓自律神経発達を反映する指標であると報告して来た。今回我々は生後1ヶ月の健常乳児の体表面心電図から算出するVRを用いて児童の心臓自律神経制御機構の成熟度について、児童の周産期プロフィール、なかでも在胎週数に着目して比較検討した。生後1ヶ月が経過しても在胎週数37週未満の早産児は正期産群よりも有意に高いVR値を示した。これは早産児では自律神経系の成熟が遅れるという心拍変動を用いた先行研究(Karinna L. Fyfe,et al. Sleep. 2015)の結果と一致した。またVRは出生時体重や性別と関係を示さなかったことから、乳児の自律神経の成熟には胎内での肉体的発育を示す体重よりも在胎週数が大きく影響することが考えられた。さらにKrauss Tが提示したVR IからIVの4つのフォーミュラ(Krauss TT, et al.PACE 2009)を用いて検討を進め、心拍数の高い乳児ではVR(I)よりも、心拍数の影響を除くために補正QT時間を用いるフォーミュラVR(III)の方がより自律神経系の評価には有用であることが推測された。この結果、生後1ヶ月の乳児においてVR(Ⅲ)は在胎週数を反映し、早産児を識別することが可能な心電図指標であり、今後の早産児の自律神経発達の評価に応用出来る可能性が示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Pediatr Cardiology
巻: 38 ページ: 582-587
10.1007/s00246-016-1551-z.
Ann Noninvasive Electrocardiol
巻: 17 ページ: 印刷中
10.1111/anec.12444.