当該研究の目的は、子どもの精神病リスクの早期スクリーニング・システムを開発することである。最終的にはこのスクリーニング・システムを小児科および児童精神科臨床で応用することを目指す。 当該研究期間には20代の統合失調症患者群および正常群対象にCBCL(子どもの行動チェックリスト)を使用して遡及的疫学調査を行い、各群の児童期(6~8歳)の心理行動特性を求めた。疫学データの統計解析結果から、統合失調症患者の児童期には既にサブクリニカルな心理・行動特性のコンビネーション・パターン(ひきこもりや思考の問題、極端な攻撃性欠如など)が存在することを明らかにした。さらに、この特性パターンを精神病リスクの潜在的エンドフェノタイプマーカーとしてリスク群同定アルゴリズムに組み込んだ「子どもの精神病リスク早期スクリーニング・システム CPSS」を開発した(特願2017‐227014)。将来的にはこのスクリーニング・システムを運用して、一般小児科および児童精神科外来臨床において6~8歳の初診患児の精神病発症リスク%を算出することができる。今後は、小児科および児童精神科外来臨床において5年間の前向追跡調査を行い対象のアウトカムを検証してCPSSスクリーニング・システムの判別力を確認する予定である。上記スクリーニング・システムはハイリスクで登園しぶりや不登校、ひきこもり等の不適応状態にある子どもに対して、医療、保育、療育、心理、教育、行政の幅広い分野にわたる多次元的な早期介入戦略を構築することを可能にするものである。
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