本研究の目的は、共感的相互作用の効果を明らかにし、共感的相互作用を活用した指導方法を提案し、保育に活用していくことである。29年度は、他者との身体表現で生じた快の感情が新たな身体表現を生むことを示す事例を示すこと、そして、保育者が共感的相互作用を活用した指導をするために保育の内容や指導方法を提案することであった。 事例検討のために幼稚園児3歳児と5歳児を対象に、共感的相互作用による身体表現の遊びの展開を観察した。3歳児は、誰かが始めた遊びに興味を持ち遊びに参加し一対一の関わりによる遊びが見られたのに対して、5歳児は、スカーフの動きやスカーフによって引き起こされる動きを共有し他児と関わり、相手の反応を見て新たな表現の方法を見出し展開するという違いが見られた。また、スカーフの扱いが巧みになるが、だれと一緒に共有するのか、物を巡る人との関係が重要であった。相手が試行錯誤していることを一緒にやってみる、声をかけて誘い相手とやりとりが積極的になり、どうやったら相手と面白さを共有できるか探りながら新たな身体の動きや表現の方法を提案し変化させて展開していることが明らかになった。相手にリズムを合わせようとする、テンポをだんだん速くすると相手と遊びが崩れないように合わせようとする、相手のことを考えながら遊ぶ、見せ合う、教え合う、遊びの提案をする、笑い合う、相手と心地よい身体接触を楽しむなど、遊びをきっかけに互いの共感的相互作用が高まることが観察できた。 共感的相互作用が高まる遊びとして、わらべ歌、遊び歌がある。保育者が活用できるように、歌詞、遊び方、遊びの発展の仕方などをまとめ、保育の内容や指導方法についての保育者対象の研修資料を作成した。
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