• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

幼児の音声情報解読とその表現の発達状況ー人間関係構築との関連を視点とした国際比較

研究課題

研究課題/領域番号 26350947
研究機関ノートルダム清心女子大学

研究代表者

吉永 早苗  ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 教授 (80200765)

研究分担者 無藤 隆  白梅学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40111562)
大矢 大  京都女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40169074)
水崎 誠  東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50374749)
北野 幸子  神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90309667)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード音声情報解読 / 音声表現 / 感情
研究実績の概要

本研究は,幼児の音声情報解読とその表現の発達状況を調査し,それに影響を及ぼす環境要因を明らかにすることを目的とする。
音声情報の獲得に関しては,10種類の間投詞的応答表現「ハイ」に対する幼児の音声評価調査から,「音声情報解読は年齢と共にその精度を増し,具体的で多様な回答が得られるようになること」,「具体的で多様な回答には,音声情報を表現するための多様な語彙の獲得が窺える」,「自ら選んでする遊びを中心とした保育形態のなかで幼児は,自分の思いを自分の言葉で相手に伝えることを獲得しているのではないか」といった結果を得た。
また,調査協力園のうちの一つの園が他園に比べて音声情報獲得に突出していたため,その保育園を訪問して観察および聞き取り調査を行ったところ,保育者と幼児との応答的な言葉のやり取りに優れていることが分かった。
次に同じ幼児を対象として,「ふつう」「うれしい」「怒った」「悲しい」の4種類の表情絵に合う感情を,順に「おはよう」で発声する音声表現の調査を行った。その結果,「年齢と共に感情の音声表現が上達する」,「うれしさはスタッカート,悲しみや優しさはレガート,怒りはアクセントのように表現される傾向にある」ことが明らかとなった。また,「おはよう」と「ハイ」の平均得点には正の相関が認められ(r=.547, p<.001),音声情報の獲得とその表現との関係性が示唆された。
異なる音響特性で歌唱した6種類の「おはよう」に対する幼児と大学生の感情判断』調査(吉永・無藤,2015)において,幼児(5~6歳児)は「おはよう」の意味内容を優先する傾向にあり,どの音声刺激に対しても「うれしい」と回答する傾向にあったが,本調査の発話における感情表現において,幼児は明らかにその音声特徴を使い分けており,一つひとつの語をどのように発話するのかにまで表現を微細に工夫しようとしていることが窺えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度は,代表の吉永に,単著の出版(「子どもの音感受の世界」=本研究の一環)および勤務校の移動などがあったため,国際比較に向けての準備および,音声情報獲得と人間関係構築に関する分析が,やや遅れている。

今後の研究の推進方策

今後の推進方策は以下の5点である。
(1)音声情報獲得・感情の音声表現に優れていた保育園での個別調査を行い,環境要因との関係についての考察を深める。
(2)音声判断の手掛かりが感情と矛盾したときの感情判断に関する調査(Morton&Trehub)を応用し,国内で同様の調査を実施し,国際比較を行う。
(3)これまでの調査のVTRおよび保育園での聞き取り調査に基づいて,音声情報獲得と人間関係構築の分析を行う。
(4)これまでの成果を7月に開催される国際学会で発表し(エントリー済み),国際交流を図ることで,環太平洋地域での調査に繋ぐ。
(5)これらの成果は随時学会発表を行うともに,論文にまとめ,学会誌に投稿する。

次年度使用額が生じた理由

データ分析・資料整理のための時間数が予定よりも少なかったこと,加えて,予定していた国際比較の国内での調査が未終了であるため,人件費・謝金の支払額が少なかった。また,音声情報獲得の調査が人間関係構築の分析にまで至っていないため,「人とのかかわり・パーソナリティー形成」を専門とする分担者の旅費の支払いが無かった。

次年度使用額の使用計画

音声情報獲得とその表現の発達が人間関係構築とどのように関係しているのかの分析にあたり,「人とのかかわり・パーソナリティー形成」を専門とする分担者が旅費として使用する。予定していた国内調査を次年度に実施するため,データ分析・資料整理のための人件費を使用する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (7件)

  • [雑誌論文] 人はイルカを見てどのようなことばを語るのか-水族園における来園者の会話についての一考察2015

    • 著者名/発表者名
      大矢大他
    • 雑誌名

      京都女子大学大学院こころの相談室 心理臨床研究

      巻: 7 ページ: 3-10

  • [雑誌論文] 異なる音響特性で発声された6種類の「おはよう」に対する大学生と幼児の音声判断2015

    • 著者名/発表者名
      吉永早苗・無藤隆
    • 雑誌名

      ノートルダム清心女子大学紀要

      巻: 37-1 ページ: 48-60

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 幼児の音声情報解読とその表現の発達状況Ⅲ -4種類の表情絵に対する幼児の音声表現「おはよう」の調査から2016

    • 著者名/発表者名
      吉永早苗・北野幸子・水崎誠
    • 学会等名
      第69回日本保育学会
    • 発表場所
      東京学芸大学
    • 年月日
      2016-05-06 – 2016-05-07
  • [学会発表] 幼児期の学びを生かした小学校教育への接続-表現と言葉の育ちの観点から-<音楽表現と言葉の育ち>2016

    • 著者名/発表者名
      吉永早苗
    • 学会等名
      第69回日本保育学会
    • 発表場所
      東京学芸大学
    • 年月日
      2016-05-06 – 2016-05-07
  • [学会発表] Action research project focusing on bringing up children’s empathy and social morality: Through lesson study and family involvement2015

    • 著者名/発表者名
      北野幸子
    • 学会等名
      25th EECERA Annual Conference
    • 発表場所
      スペイン
    • 年月日
      2015-09-07 – 2015-09-10
    • 国際学会
  • [学会発表] 領域「表現」における幼児の協同的学びについての実践研究‐音・音楽表現遊びにおける幼児の協同的学び2015

    • 著者名/発表者名
      吉永早苗
    • 学会等名
      日本教育心理学会第57 回総会
    • 発表場所
      新潟コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-08-26 – 2015-08-28
  • [学会発表] 幼児の音声情報解読とその表現の発達状況Ⅱ-10種類の「ハイ」に対する3歳〜6歳児の音声評価と保育形態との関係2015

    • 著者名/発表者名
      吉永早苗・無藤隆・北野幸子・水崎誠
    • 学会等名
      第68回日本保育学会
    • 発表場所
      椙山女学園大学
    • 年月日
      2015-05-09 – 2015-05-10
  • [図書] 子どもの音感受の世界-心の耳を育くむ音感受教育による保育内容「表現」の探求2016

    • 著者名/発表者名
      無藤隆監修 吉永早苗著
    • 総ページ数
      262
    • 出版者
      萌文書林
  • [図書] 共感覚からみえるもの-アートと科学を彩る五感の世界2016

    • 著者名/発表者名
      北村紗衣編著 松田英子,吉永早苗他
    • 総ページ数
      424
    • 出版者
      勉誠出版
  • [図書] 技術・家庭学習指導書【家庭分野】内容編A 家族・家庭と子どもの成長2016

    • 著者名/発表者名
      北野幸子他
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      開隆堂
  • [図書] 実践事例から学ぶ保育内容 社会情動的スキルを育む「保育内容 人間関係」 乳幼児期から小学校へつなぐ非認知能力とは2016

    • 著者名/発表者名
      無藤隆編著
    • 総ページ数
      184
    • 出版者
      北大路書房
  • [図書] 改訂第3版 幼児の音楽教育法-美しい歌声をめざして-2015

    • 著者名/発表者名
      吉富功修・三村真弓(編)水崎誠他
    • 総ページ数
      161
    • 出版者
      ふくろう出版
  • [図書] 毎日コツコツ役立つ 保育のコツ502015

    • 著者名/発表者名
      無藤隆
    • 総ページ数
      119
    • 出版者
      フレーベル館
  • [図書] 国語教育研究手法の開発2015

    • 著者名/発表者名
      無藤隆他
    • 総ページ数
      69
    • 出版者
      全国大学国語教育学会

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi