研究分担者 |
無藤 隆 白梅学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40111562)
大矢 大 京都女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40169074)
水崎 誠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50374749)
北野 幸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90309667)
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研究実績の概要 |
本研究は,幼児の音声情報解読とその表現の発達状況を調査し,それに影響を及ぼす環境要因を明らかにすることを目的とする。 音声情報の獲得に関しては,10種類の間投詞的応答表現「ハイ」に対する幼児の音声評価調査から,「音声情報解読は年齢と共にその精度を増し,具体的で多様な回答が得られるようになること」,「具体的で多様な回答には,音声情報を表現するための多様な語彙の獲得が窺える」,「自ら選んでする遊びを中心とした保育形態のなかで幼児は,自分の思いを自分の言葉で相手に伝えることを獲得しているのではないか」といった結果を得た。 また,調査協力園のうちの一つの園が他園に比べて音声情報獲得に突出していたため,その保育園を訪問して観察および聞き取り調査を行ったところ,保育者と幼児との応答的な言葉のやり取りに優れていることが分かった。 次に同じ幼児を対象として,「ふつう」「うれしい」「怒った」「悲しい」の4種類の表情絵に合う感情を,順に「おはよう」で発声する音声表現の調査を行った。その結果,「年齢と共に感情の音声表現が上達する」,「うれしさはスタッカート,悲しみや優しさはレガート,怒りはアクセントのように表現される傾向にある」ことが明らかとなった。また,「おはよう」と「ハイ」の平均得点には正の相関が認められ(r=.547, p<.001),音声情報の獲得とその表現との関係性が示唆された。 異なる音響特性で歌唱した6種類の「おはよう」に対する幼児と大学生の感情判断』調査(吉永・無藤,2015)において,幼児(5~6歳児)は「おはよう」の意味内容を優先する傾向にあり,どの音声刺激に対しても「うれしい」と回答する傾向にあったが,本調査の発話における感情表現において,幼児は明らかにその音声特徴を使い分けており,一つひとつの語をどのように発話するのかにまで表現を微細に工夫しようとしていることが窺えた。
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