研究課題/領域番号 |
26350948
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
岩田 昇 広島国際大学, 心理学部, 教授 (80203389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内在化問題 / 外在化問題 / 児童 / 生徒 / ストレス / 家庭 |
研究実績の概要 |
2015年度の当初研究計画は,公立7小学校5・6年生の内在化・外在化問題行動に関する質問紙調査を実施する予定であった。調査は児童自身,児童の保護者,および児童のクラス担任教師を対象とするもので,これまで児童を対象にした調査に協力が得られていた公立7小学校での調査を予定していた。この調査実施に向けて,前年度より学校関係者と協議を行ってきた。しかしながら,今回の研究では養育者にも調査協力を求めるというプロジェクトであり,その点が大きな障害となり,学校側の調査承諾を得るに至っていない。 一方,本研究のベースラインとなる小学校から中学校に移行した際のストレス調査は昨年度で終了し,データ整理および解析を行った。すなわち,A公立中学校区4小学校(166名),小小連携・小中連携に積極的に取組んでいるB公立中学校区2小学校(73名)の6年生次のデータとA・B中学校入学後のデータをリンクさせ,個人内の変化およびグループ間の相違を検討した。A・B中学校生徒ともに「学業」ストレッサーが有意に上昇した。ストレス反応では,A中学校で「身体反応」「不機嫌・怒り」「無力感」が有意に上昇したが,B中学校ではストレス反応の上昇は認められなかった。両地域とも性差は見られなかった。小小連携・小中連携によって,「中1ギャップ」の発現を抑制できる可能性が示唆され,この変化には,特に父親のサポートが関連している可能性が示唆された。それらの一部は,市民向け公開講座および中国四国心理学会にて報告した。 さらに,縦断データの最新の解析技法を用いて,変動パターンが異なる集団の特定およびそれに影響する要因の解明を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本申請者がこれまで連携してきている広島県内7公立小学校で調査を行う予定で,各小学校の校長等学校関係者ないしPTA役員等に研究概要を説明してきた。しかしながら,今回の研究では各養育者(保護者)にも調査参加同意を得る必要があり,しかも一部の保護者だけではなく,少なくとも学級単位での同意が必要である。学級担任の同意も同様である。個人情報に関する意識の高まりとカリキュラムがタイトな編成になっている現在の小学校では,これらのすべての協力を得ることが困難で,現在までのところ,研究計画にすべて沿った形での調査実施に至っていない。まず,本申請者が研究目的で保護者へ協力依頼することを学校側が承諾した上で,各家庭への依頼書が送付されるという手順を構想したのだが,保護者への懸念もあってか,この段階で難色が示されている。 一方,児童生徒のみの調査は実施されてきており,少なくとも児童生徒の小学校中学校移行に伴う心身のストレス状態の変化に関する知見は蓄積されてきている。また,先行研究レビューおよび調査項目選定もほぼ順調に進んでおり,本研究課題に則した質問紙測定尺度の検討は完了している。
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今後の研究の推進方策 |
このままでは本研究課題の中核部分の一つである,複数の観察者(保護者・担任教師)による客観的な心理・行動評価データが得られないことが危惧されるため,調査対象校の候補を他地域にまで拡大し,教育センター関係者ともコンタクトを取り,候補校を訪問して協力依頼していく予定である。その働きかけを夏休み前まで行い,9~10月には複数の小学校での調査実施ができるよう関係方面と連絡連携を取る。場合によっては,若干の変更を強いられる可能性も否めないが,調査実行可能性の方を優先する予定である。 その上で,小学校現場および各家庭への調査票配布および回収を行っていく。得られた回答は,すみやかにデータ入力に回し,年内に集計し,年度内に調査協力者(小学校・保護者)全員に全体結果をフィードバックする。それと並行して,保護者用のパンフレットの原版作成に着手する。このパンフレットでは,イラストを多用し,子どもの心理的成長過程における揺らぎや保護者の養育態度の重要性や問題のある接し方の例などを分かりやすく提示できるよう検討していく。さらに,学校・学級単位で報告できる機会を設け,研究全体への理解とさらなる協力を求めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に保護者および担任教師への調査が実施できなかったために,経費が抑制されたことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は計画を実現可能なものに修正しつつ,小・中学生および養育・保護者,ならびに学級担任への調査を実施する予定で,教育センター関係者との協議を行っている。2015年度の状況を踏まえ,2016年度はさらに多くの学校を訪ね,協力依頼を行う予定である。保護者の調査参加を絶対条件とせず,児童および教諭の協力が得られる小学校への調査を実施することで,部分解であっても,実証研究を行うべく,さらなる調整を行う。
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