子どもの寝つきは子ども自身にとっても,養育者にとっても重要な問題である。子供においては、夜間の充分な睡眠と昼間の高い覚醒の安定的なサイクルは心身の健康の基礎である。養育者において、子どもの寝つきの悪さや中途覚醒は育児におけるストレッサー要因として深刻である。しかし,就床時のぐずりに着目した子どもの感情安定化方略に関する研究は皆無に等しい。 親子の添い寝場面では,引き込み現象がみられることが実験によって証明されている。乳児が睡眠状態へ移行する過程で大人がいかに乳児を睡眠に引き込みやすい環境を整えるかが,寝かしつけの成功につながる。一般的に,新生児の呼吸回数は50回前後,心拍数は100~150回/分であるが,年齢とともに少なくなりる。また,泣いたりぐずったりすると乳幼児の心拍数や呼吸数は上昇するが、入眠が進行するに連れて心拍数や呼吸数は低下する。このような変動に応じて,寝かしつけ行動が生起しているのかどうかを検討するために,本年度は, 0歳児クラスと1歳児クラスの保育士が,午睡時間に子ども達をどのように寝かしつけているのかを予備的に観察した。 保育園の0歳児クラスと1歳児前半クラスの午睡時場面を観察し,保育士が子どもを寝かしつけている様子をビデオカメラで録画し,分析を行った。保育士が行った揺らしや振動についてカウントすると,0歳児クラスの保育士は1歳児クラスの保育士よりも,子どもが泣いたりぐずったりすると,子どもの体をトントンとたたく頻度が速かった。また,両クラスともに,泣いている時は,トントンする頻度が速かった。これらのことから,0歳児クラスや1歳児前半クラスの保育士は,子どもの呼吸速度に合わせて子どもの体に揺らしや振動を与えており,子どもの呼吸速度を考慮しながら、睡眠時の呼吸測度への引き込みを試みている可能性が示唆された。
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