研究課題/領域番号 |
26350956
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
齊藤 知範 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 主任研究官 (10392268)
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研究分担者 |
田中 智仁 仙台大学, 体育学部, 准教授 (00642042)
山根 由子 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 研究員 (80721175)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子育て / 育児 / 防犯活動 / 犯罪不安 / ネットワーク / 質的研究 / 犯罪社会学 / 社会病理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、質的手法と量的手法を組み合わせた調査・分析により、子どもを育てる女性や防犯活動従事者が抱える防犯上の負担を緩和するための方策を解明することを目的とする。 第2年度である平成27年度は、研究参画者の間で、研究計画、進捗状況を随時打ち合わせしながら、研究を進めた。防犯に携わる関係者(市民、事業者)の活動状況や負担感等についての文献研究、事例調査については、研究参画者全員で手分けして実施した。また、学童保育指導員に対する予備的調査も実施した。 前年度に先行して進めていた、防犯上の負担に関する量的調査を引き続き行い、十分な数を収集した。その上で、齊藤、山根を中心に、教員や保護者等の防犯上の負担について分析し、日本安全教育学会大会において発表した。さらに、放課後子ども教室調査の資料検討を進め、放課後子ども教室指導員にとっての負担をテーマに、安全教育論の専門家を中心に同学会において発表した。 田中は、国内学会(日本社会学会、日本犯罪社会学会、日本社会病理学会)において防犯活動や犯罪被害不安に関する先行研究について情報を収集した。また、セキュリティ産業の事業展開について、展示会(Security Show)で最新の防犯関連サービスについて情報を収集した。その結果、エスコートやパトロール等の人的警備に加え、既存の機械警備システムを応用した通信型サービスの拡充が図られていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に先行して進めた、防犯上の負担に関する量的調査については、追加収集を実施することができた。これらのデータの分析を通じて、防犯負担の尺度と背景要因についての検討作業が進捗し、日本安全教育学会大会で発表した。学会発表の準備の過程で、社会教育学、安全教育論、地域安全学などの関連分野の専門家と意見交換を深め、保護者を取り巻く多層的なネットワークの布置状況について検討を進めることができた。また、前年度に新たな着眼点として重要視していた、放課後に子どもが通う施設関係者についての検討を安全教育論の専門家とともに進めた。これにより、放課後子ども教室指導員が抱える負担の一端を、日本安全教育学会大会での発表を通じて明らかにすることができた。 セキュリティ産業等の事業者による防犯関連事業に焦点を当てた検討を進めた。防犯を担うアクターである事業者の側の最新動向を展示会(Security Show)で収集し、検討した。さらに、網羅性のある資料を重視し、経時的な側面にも着眼することとした。具体的には、サービスの対象が子どもを育てる女性や防犯活動従事者へシフトする時期と要因を明らかにするために、2016年3月までに警備業界紙および関連刊行物(『警備保障新聞縮刷版』、『警備業年鑑(1993‐2003)』、『セキュリティ情報(2005‐2009)』)を購入し、検討に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
量的調査にもとづく防犯負担の尺度と背景要因の検討は進捗し、学会発表も進んでいるため、平成28年度の主な課題としては、本調査(想定としては、質的調査)を実施して分析を進めること、警備業界紙および関連刊行物の分析を進めることである。 平成27年度までに、学童保育指導員に対する予備的調査を実施したところであるが、放課後に子どもが通う学童保育などの施設関係者、施設を利用している保護者等を、防犯に携わる関係者のネットワークの構造のなかに位置づけるためには、本調査の実施が必要である。平成28年度は、本調査の実施を計画しており、子どもを育てる女性や防犯活動従事者が抱える防犯上の負担やその背景構造を明らかにしたい。本調査にあたっては、放課後子ども教室指導員にとっての負担を明らかにした学会発表の知見、平成27年度に学童保育指導員へのヒアリングを行った結果なども手がかりにして進めたい。 防犯を担うアクターとして、セキュリティ産業等の事業者に焦点を当てた検討を着手しており、引き続き分析を進める。警備業界紙および関連刊行物(『警備保障新聞縮刷版』、『警備業年鑑(1993‐2003)』、『セキュリティ情報(2005‐2009)』)の内容分析を進めることにより、防犯関連事業の形成過程を明らかにすること、子どもを育てる女性や防犯活動従事者に対して事業者から提供されるサービスの現状と課題を検討することを計画している。 成果の統合に向けた検討作業と打ち合わせを継続し、子どもを育てる女性や防犯活動従事者が抱える防犯上の負担を緩和するための方策を解明することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
大人数対象の質的調査とそのテープ起こしを平成27年度は行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施予定の質的調査とテープ起こしの経費に充当する。
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