研究課題
1.高精度・高感度アミノプロダクト検出系の確立:申請者らが世界に先駆けて開発した周産期疾患モデルマウスから『化学情報』に基づいてサンプルを採材・前処理し、薬剤に対する反応性という『生物情報』に基づいた薬剤応答性アミノプロダクトを同定するための必須の技術を2つ確立した。1)アミノプロダクトの特徴であるアミノ基を利用して、芳香族系の蛍光試薬で誘導体化することで、水溶性の高い物質でも汎用されている逆相系のカラムを用いたHPLCによる分離・定量が可能となった。さらに溶出画分を分取し、MALDI-QIT-TOF/MSで高感度に分子量並びに構造解析と同定を行うことが可能となった。この技術により、妊娠高血圧疾患時にマウス体内で量的変動を示すアミノプロダクトの同定と定量に成功した。2)比較的イオン化しやすい物質については、LC-MS/MSを用いて誘導体化することなく物質の分離と同定を一気に行うことで、効率的にアミノプロダクトの分離と定量化が可能となった。生体内のあらゆるメチル化反応の際に、メチル基供与体として機能するアミノプロダクトの一つ、S-アデノシルメチオニン及びS-アデノシルホモシステインの分析系を新たに確立した。2. タンパク質中の修飾アミノ酸の定量技術の確立:アミノプロダクトの一種であるアミノ酸の分析については、多くのメーカーでその分析キット等が販売されているが、修飾されたアミノ酸を一挙に分析するシステムは開発されていない。そこで、1.の2)で確立したLC-MS/MSのシステムを応用して、線虫タンパク質中のメチル化アミノ酸の定量系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
アミノ基特異的な蛍光標識により、微量なアミノプロダクトを感度よく検出、定量できている。現時点ではNMRを用いていないが、低分子である事も有り、MALDI-QIT-TOF/MSの利用で十分物質の同定は可能である。またLC-MS/MSを分析系に導入したことにより、分離同定から定量分析まで一気に可能になったことは修飾アミノ酸の定量等、応用範囲が広がった。
H26年度に同定・定量に成功したアミノプロダクトについて、周産期疾患モデルマウスに薬剤を投与した際に変動する物質について、詳細に定量解析を行う。既に先行して同定したエタノールアミン(妊娠高血圧時に2倍に増加し、降圧剤投与で健常時レベルまで回復する)については、現在論文投稿準備中である。さらに、予備実験で薬剤投与時に代謝産物が蓄積するアミノプロダクトを検出しており、今後本物質の同定と詳細な定量解析を行って行く予定である。
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American Journal of Physiology-Heart and circulatory physiology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1152/ajpheart.00703.2013
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 78 ページ: 981-988
10.1080/09168451.2014.910102