研究課題
薬剤投与した周産期疾患モデルマウスの血漿サンプル中に存在するアミノプロダクトに対し、アミノ基を芳香族系蛍光試薬(6-aminoquinolyl-N-hydroxysuccinimidyl carbamate : AQC)で誘導体化することで、HPLC及び超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)において逆相系のカラムで分離・定量し、溶出画分を分取後、MALDI-QIT-TOF/MSで高感度に分子量測定並びに構造解析を行った結果、エタノールアミン(既に論文発表済)ともう1種類のアミンの同定と定量に成功した。また、老化のモデル動物である線虫を材料として、長寿の形質を示すS-アデノシルメチオニン(SAM)合成酵素(SAMS-1)のノックダウン線虫におけるメチル基供与体SAM(アミノプロダクトの1種)を、LC-MS/MSを用いて定量し寿命とSAMの量的関係を明らかとした。さらに、上記のLC-MS/MSのシステムを応用して前年度確立した、線虫タンパク質中のアミノプロダクトであるメチル化アミノ酸の定量系を用いて、タンパク質中のアルギニン残基をモノメチル化、非対称ジメチル化、及び対称ジメチル化する酵素の探索を行った。その結果、これらの反応の責任酵素を同定し、かつそのin vivoにおける酵素活性の特性を解析した(現在論文投稿準備中)。また上記のアルギニンとは別に、線虫の老化に伴い量的に変化するある修飾アミノ酸を同定していた。そこでこの翻訳後修飾反応を触媒する酵素の探索を行い、候補酵素を同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度に確立した手法を用いて、周産期疾患モデルマウスの血漿から、疾患状態を反映して増加するアミンとしてエタノールアミンを同定し、さらにこれが抗圧剤に応答して正常レベルまで減少することを分析化学関係の専門誌に発表した。現在第2の薬剤応答アミノプロダクトについても詳細な構造の決定とその生成機序を解析中であり、来年度中の論文発表を目指している。アミノプロダクトの中、S-アデノシルメチオニンをはじめとする細胞内代謝産物、並びにタンパク質中のアミノ酸の修飾状況を測定し、周産期モデルマウスに限らず幅広いサンプルでの分析が可能になったため、今年度老化関連のタンパク質アミノ酸残基の修飾酵素の探索で成果を上げつつある。このアミノ酸修飾酵素の探索の結果同定した、アルギニン残基の修飾酵素については来年度中の論文発表を目指している。
【現在までの進捗状況】で記載した、第2の薬剤応答性のアミノプロダクトに加え、S-アデノシルメチオニンを含む含硫アミノプロダクトについて、周産期モデルマウスのみならず、様々なモデル動物について解析を進める。またLC-MS/MSを用いた線虫のタンパク質アミノ酸修飾酵素の探索についても、寿命の制御の観点からさらに他のアミノ酸の修飾に着目して探索を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件)
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