研究課題/領域番号 |
26350957
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加香 孝一郎 筑波大学, 生命環境系, 講師 (60311594)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミノプロダクト / アミノ基 / MALDI-QIT-TOF/MS / tele-メチルヒスタミン / LC-MS/MS / モノアミンオキシダーゼ / メチル化アルギニン / PRMT |
研究実績の概要 |
降圧剤ヒドララジン(Hdz)処理した妊娠高血圧モデルマウス(PAHマウス)の血漿サンプル中に存在するアミノプロダクトに対し、アミノ基を芳香族系蛍光試薬(6-aminoquinolyl-N-hydroxysuccinimidyl carbamate : AQC)で誘導体化することで、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)で分離・定量し、溶出画分を分取後、MALDI-QIT-TOF/MSで高感度に分子量測定並びに構造解析を行った結果、tele-メチルヒスタミン(tMH)の同定とLC-MS/MSを用いた定量系の確立に成功した。このtMHが血中で増加する原因を探索する目的で、ヒスタミンの生成・代謝について検討したところ、tMHの代謝酵素であるモノアミン酸化酵素B(MAO-B)がin vitroの反応系でHdz添加により阻害されたことから、in vivoでもPAHマウス体内でHdzがMAO-Bを抑制した結果、tMHが増加したことが示唆された(既に論文発表済み)。 アミノプロダクトの一つであるアミノ酸の化学修飾を解析する目的で、上記のLC-MS/MSの定量系を応用して、モデル生物である線虫のタンパク質中メチル化アミノ酸の定量系を確立した。メチル化を受けるアミノ酸残基の中でも、アルギニン側鎖は、モノメチル化、非対称型または対称型ジメチル化修飾を受け、それぞれモノメチルアルギニン(MMA)、非対称型ジメチルアルギニン(ADMA)、対称型ジメチルアルギニン(SDMA)に変換される。線虫個体ではPRMT-1がADMA化を担うことが判明している一方、これまでMMA化とSDMA化の責任酵素は不明であったが、上記の技術を用いてprmt-1及びprmt-5欠損変異体線虫を解析し、PRMT-1が一部MMA化を触媒するのに対し、PRMT-5はMMAをSDMAに変換することを示した(既に論文発表済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度までに確立した手法を用いて、周産期疾患モデルマウスに対し降圧剤ヒドララジン(Hdz)投与に応答して増加するアミンとして、tele-メチルヒスタミン(tMH)を同定し、新たにを確立したLC-MS/MSの定量系を用いて薬剤投与に応答して増加することを証明した。さらにtMHの代謝酵素であるモノアミン酸化酵素Bがin vitroの反応系でHdz添加により阻害されたことから、t-MHが血中で増加するメカニズムとして、PAHマウス体内でHdzがMAO-Bを抑制した結果、tMHが増加したことが示唆され、生化学専門の国際誌に発表することができた。 また、LC-MS/MSを用いてアミノプロダクトの一種であるアミノ酸の測定系を確立することで、周産期モデルマウスに限らず、幅広いサンプルでの分析が可能になったため、モデル生物の1種である線虫を用いて、薬剤応答や恒常性維持に関わるタンパク質翻訳後修飾酵素の探索を行った。翻訳後修飾の中でも、タンパク質アルギニン側鎖は、モノメチル化、非対称型または対称型ジメチル化修飾を受け、それぞれモノメチルアルギニン(MMA)、非対称型ジメチルアルギニン(ADMA)、対称型ジメチルアルギニン(SDMA)に変換される。線虫個体ではPRMT-1がADMA化を担うことが判明している一方、これまでMMA化とSDMA化の責任酵素は不明であったが、上記の技術を用いてprmt-1及びprmt-5欠損変異体線虫を解析した。その結果、PRMT-1が一部MMA化を触媒するのに対し、PRMT-5はMMAをSDMAに変換することを示し、生化学専門の国際誌に発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で記載したヒスタミン生成・代謝に関連して、ヒスタミンのメチル化に対する新規のメチル基供与体の寄与について、新たな反応系の確立を検討する。 また、LC-MS/MSを用いた線虫のタンパク質メチル化酵素の探索についても、寿命の制御の観点からアルギニンを含め様々なアミノ酸の修飾に着目して探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本補助事業中に確立した手法を用いて、昨年第2の薬剤応答性アミノプロダクトとしてtele-メチルヒスタミン(tMH)を同定し、その生成機序を解明、論文発表した。tMHは、ヒスタミンが生体内でメチル化反応を受けることにより生成するが、アミノプロダクトの薬剤応答性をさらに精緻に解明する目的で、このメチル化反応に寄与すると思われる、食品や薬剤中のメチル基供与体候補を探索する必要が生じたから。
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次年度使用額の使用計画 |
アミノプロダクトの一種であるヒスタミンは、炎症のメディエーターとしてのみならず、中枢神経では神経伝達に、また末梢では胃酸分泌に関与している。ヒスタミンが生体内で酵素的にメチル化反応を受けると、不活性なtMHとなり、過度の胃酸分泌を抑制することにより胃潰瘍を抑制しうることが期待される。この際メチル基供与体として一般的にはS-アデノシルメチオニンが用いられるが、様々な食品や薬剤中には、メチル基供与体の候補となる化合物が存在する可能性がある。 ヒスタミンに対する薬剤作用機序をさらに精緻に解明するため、メチル化反応に寄与すると思われるメチル基供与体の候補物質を食品や薬剤を材料に探索し、in vivo及びin vitroで反応させた後、本研究同様にLC-MS/MS等を用いて解析を行うことで、ヒスタミンのメチル化を促進しうる新規のメチル基供与体を同定する。
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備考 |
上段は、所属研究室のホームページ。 下段は、世話人代表として自ら主催し、本研究内容を発表した学術集会のホームページ。
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